27 March, 2014

個人金融資産残高は過去最高の1645兆円|ニッセイ基礎研究所

ニッセイ基礎研究所: 資金循環統計(13年10-12月期)~個人金融資産残高は過去最高の1645兆円、前年比93兆円増
http://www.nli-research.co.jp/report/flash/2013/flash13_228.html
2013年12月末の個人金融資産残高は、前年比93兆円増の1645兆円となった 。残高は過去最高を大きく更新したことになる。一年間で資金の純流入が30兆円あったうえ、アベノミクス下の円安・株高を受けて時価が63兆円増加し、金融資産の大幅増加をもたらした。四半期ベースでは、前期末比で35兆円の増加となった。例年10-12月期は一般的な賞与支給月を含むことからフローで流入超過となる傾向があり、今回も19兆円の流入超過となった。また、年末にかけて円安・株高が進行したことに伴って時価が16兆円増加した。
ここだけ見ると,「やっぱり円安っていいじゃん」って読めるね。必ずしもそうでもないんだけど。
10-12月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を見ると、リスク性資産については、投資信託への資金流入額が1.2兆円と過去2年の同時期を上回る水準となった一方で、株式・出資金からの流出額が4.1兆円に達し過去最高を記録するなど、まちまちの結果に。株式・出資金からの大量資金流出は、証券優遇税制廃止に伴う駆け込み売却の影響が大きかったためであり、この時期に家計が安全志向を強めたわけではないとみられる。個人投資家は年末にかけて株式を大きく売り越したが、新年入り後は買い越しが優勢になっている。
確かに,年末にいったん株のポジションを解消した人は多くいた感じがする。

その他,レポート本体を眺めて気づいた点や気になった点:
  • (図表4)株価と為替の推移(月次終値)を見るかぎり,日経平均と円ドルレートは完全に相関しているね。
  • 「12月末以降の金融市場は新興国不安やクリミア情勢の緊迫化などから円高・株安基調で推移しているため、足元の金融資産残高は12月末からやや減少している可能性が高い」とのこと。
  • 「国債の保有状況を見ると、従来から最大の保有主体である預金取扱機関(銀行など)の保有高が8兆円減少する一方で、中央銀行(すなわち日銀)の保有高が13兆円増加し、銀行等の売りを吸収。結果、全体に占める中央銀行のシェアも18.6%(9月末17.3%)に上昇した。異次元緩和開始以降、日銀の存在感は急ピッチで高まっている。」とのこと。
  • 「今後も大幅な財政赤字の継続による国債残高増加が確実である一方、個人金融資産には高齢化による取り崩しという抑制要因があるため、中長期的にはいずれ両者が接近、逆転が予想されるという点は従来と変わらない」。これは注目しないとなー。
  • 「(民間非金融法人の)純借入金残高(借入金-現預金、121兆円)は9月末比で7兆円増加している。純借入金の残高はまだ12年末の水準にも及ばないが、直近の動きには、事業拡大に向けた企業の前向きな姿勢も垣間見える」ということで,企業のマインドは改善中ってとこですか。

26 March, 2014

小平邦彦生誕百年記念事業|日本数学会

日本数学会: 小平邦彦生誕百年記念事業
http://mathsoc.jp/meeting/kodaira100/index-jp.html
小平邦彦博士(1915 -- 1997) は20世紀数学における巨人の一人です。博士は Hermann Weyl によるリーマン面の理論を一般化し、大域解析学と層コホモロジー理論に基づく複素多様体理論を創造しました。その業績に対し、フィールズ賞、文化勲章、ウルフ賞など数々の賞を受賞しています。小平邦彦博士の業績を顕彰するために日本数学会は以下の事業を予定しています。
  • 大域解析学と複素幾何学に関する記念講演会
  • 記念市民講演会
  • 小平博士に関係する文献、写真、ビデオの展示
ということで,これら事業がいつどこで行なわれるかについての言及はまったくないのだが,そうですか,小平邦彦の生誕100周年とは知りませんでした。

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久しぶりに,『解析入門』読もうかな。

岩波基礎数学選書は,買っては売ってを繰り返しているけれど,『解析入門』の函入りのだけは手放すことができません。こんなにたたずまいが美しい本は,他にそうそうないと思うよ。

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「損害保険会社の保険計理人の実務基準」の改正|IAJ

日本アクチュアリー会: 「損害保険会社の保険計理人の実務基準」の改正について
http://www.actuaries.jp/info/Z20140325-2.html
日本アクチュアリー会では、公益社団法人への移行に伴う保険業法施行規則の改正への対応等のため、「損害保険会社の保険計理人の実務基準」(以下、「実務基準」)の改正内容について検討を進めてまいりました。このたび、当実務基準の改正案について、平成26年1月28日から2月4日までの間、公開による意見募集を行った結果、意見はありませんでした。 これを受け、当実務基準改正案につき、平成26年3月3日付で理事会決議を行い、平成26年3月24日付で金融庁長官より認定されました。なお、改正後の実務基準は別紙のとおりであり、当実務基準は、附則第1条に従い、平成25年度決算より適用されるものであります。(2014.3.25)
改正前(H23/12/22)と改正後(H26/3/3)のを見比べてみると,
  • 目次(全体の構成)に変更はなし
  • 「社団法人 日本アクチュアリー会」が「公益社団法人 日本アクチュアリー会」に!
  • 第4章(財産の状況に関する確認)第17条(確認の内容)2.の(2)
    • 旧:(告示(平成8年2月29日大蔵省告示第50号をいう。…)
    • 新:(告示(平成8年大蔵省告示第50号をいう。…)
  • 第4章(財産の状況に関する確認)第21条(ソルベンシーに関する確認の手続き)1.
    • 旧:(平成11年1月13日金融監督庁・大蔵省告示第3号に…)
    • 新:(平成11年金融監督庁・大蔵省告示第3号に…)
  • 第5章(IBNR備金に関する確認)第26条(確認の手続き)(2)のイ
    • 旧:(告示(平成10年6月8日大蔵省告示第234号をいう。…)
    • 新:(告示(平成10年大蔵省告示第234号をいう。…)
  • 附則第1条(適用時期)に,「6.平成26年3月の改正は…」を追加
ということで,本質的な変更はなさそうです!

こういう対照表は,ズレモレのないようにオフィシャルなのをリリースしていただきたいです。何より時間的リソースが。。。あと,pdfファイルのフッター(ヘッダーでもいいけど)には,書類の名前と日付を入れていただきたい,じゃないと新旧両方を印刷したときに,どっちがどっちか分からなくなる。

25 March, 2014

日本アクチュアリー会「グループ内再保険取引」,『会報別冊』第268号

本会報別冊は、国際アクチュアリー会(IAA)の保険監督委員会再保険小委員会が作成し、保険監督委員会が承認した文書である ”Intra-Group Reinsurance Transactions” を、保険監督部会のメンバーが訳したものです。
本文書は、保険グループ内での再保険の利用に関し、その目的や種類を示すとともに、再保険取引を行うに際してガバナンスや契約締結判断の上から留意すべき論点等について考察を行ったものです。グループ内再保険の一形態としてのプーリングシステムや特定目的事業体(SPV)を活用するスキームについても触れています。
ということだそうです。
  • 読みやすさを考慮して,グループ内再保険取引は以下「IGR」(Intra-Group Reinsurance Transactions)と言う。
  • 再保険は資本の代替形態であると言える。
  • 再保険を利用することにより出再者の必要資本を減らすことが可能となるのが通常であり,その結果,ソルベンシー比率やその他自己資本関連の比率が改善する。
  • ある会社が,バランスシートから生じるリスクに対して十分な資本を有していたとしても,その会社の他のリスクと比較してバランスが悪い1つまたはいくつかの最大リスクを保有しているケースでは,非効率な資本活用になり得る。
  • SPV(特定目的事業体)は,リスクを資本市場へ出再する手段としてグループが利用するケールが多い。各グループ会社がIGRを利用して特定のリスクをSPVへ出再し,そしてSPVがそれらリスクをパッケージにしたうえで投資家へ移転する。
  • アドバース・ディベロップメント再保険は,保険会社の準備金が悪化することから会社を守り,当該リスクに対して必要とされる資本を低く抑える。(…)この再保険は,アスベストや環境リスク,労働者災害補償,自動車損害賠償といった賠償責任保険など,大きなロングテールを抱えている保険会社のあいだで最も利用されている。
  • グループ全体にとっては利益であるが,地域会社の観点から見ると不利益である(IGR)取引は,基本的には却下すべきである。
  • 多くのIGR,特に規制要件や税制度が異なる国際取引の場合には,料率決定と交渉はアームズレングスの原則に基づいて行うべきである。出再者およびう受再者の両方が,あたかもグループ外の取引先と取引を行っているかのように契約交渉を進めるべきである。
  • 移転価格の観点からは,当該保険会社が事業を行っている市場で観察しうる範囲の取引価格であると明確に証明できなければならない。
  • IGRの使用は,同じグループに属する会社間の相互関連性を高める。したがって,あるグループ会社における問題が他のグループ会社にも波及する可能性が高まるため,結果,システミックリスクも高まると考えられる。
  • グループ自身が責任を持ってストレスシナリオを検証し,一つのグループ会社の倒産時にリスクがどのようにグループ全体に波及するかを確認しなければならない。

ソース:
https://www.actuaries.jp/member/fileview.php?file=/lib_file/5820.pdf
日本アクチュアリー会会員専用サイト「ライブラリー > 会報別冊」より

原文はこちら:
International Actuarial Association, "Intra-Group Reinsurance Transactions", October 2013
http://www.actuaries.org/LIBRARY/Papers/Intra_Group_Reinsurance_Paper.pdf

24 March, 2014

三輪,竹内「今後の国際規制の日本の保険会社への影響」,『リスクと保険』第10号

  • 金融危機前は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS),証券であれば証券監督者国際機構(IOSCO)保険であれば保険監督者国際機構(IAIS),これらがおのおの独立したかたちで、いろいろ基準設定を進めていた。
  • 金融危機を踏まえて,いわゆる金融のグローバル化の中で,政治主導で物事を決めていくという傾向が非常に強くなった。G20で決まった内容を,上記3つの基準設定機関を束ねるFSB(金融安定理事会)が主体的に検討するというレジームの変更があった。
  • 保険の基準設定を行なうIAISは,他の基準設定主体と比べて,少し特殊なところがある。それは,一定の会費を払えば,保険会社などの業界関係者などがオブザーバーとして,下位の委員会(小委員会)に参加できることになっている点。
    • このオブザーバーシップは,財源問題から発生したもの。
    • これにより,IAISは独立性に欠けるのではないかという批判がある。
  • 2012年のロスカボス・サミット(メキシコ)でのG20首脳宣言で,「グローバルなシステム上重要な保険会社(G-SIIs)」の選定をして,その選定先に対する監督上の措置を2013年4月までに行なうようにという指示が出された。あわせて,2013年末までに,「国際的に活動する保険会社(IAIGs)」に対する監督上の共通の枠組みを作るべしという指示も出された。
  • G-SIIsの当初選定先リストは,以下の通り:
    • ドイツのAllianz,アメリカのAIG,イタリアのGenerali,イギリスのAviva,フランスのAxa,アメリカの MetLife,中国の中国平安生命,アメリカのPrudential Financial,イギリスのPrudential plc。
  • G-SIIsの選定プロセスは,IAISによる「データ収集」「定量的評価」「監督上の判断・検証」という3つのプロセスを経て,最終的にFSBとIAISとの協議のうえで決定された。
  • G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)の選定手法に対する,G-SIIsのそれの違いはふたつある:
    • 定量的評価の指標に重みづけをしている点。
    • 定性評価を行なった点。
  • G-SIIsに選定された場合,以下の3つの政策措置が課される:
    • 破綻処理可能性の向上。公的資金に頼らないかたちで破綻処理を可能にするような措置の検討。
    • 監督の強化。監督当局者は,グループの持ち株会社に対し直接的な監督権限を持つことが要求される。
    • より高い損失吸収能力の賦課。すなわち,資本の上乗せ。
  • 銀行のバーゼル自己資本規制比率と異なり,保険会社の場合は国際的な資本基準がない。つまり,ベースがないのに上乗せを求められても,比較可能性が担保されない。これを解決すべく,「バックストップ資本」の策定が計画されている。
  • 保険負債は保守的に積めば積むほど資本は薄くなるので,そのような保険会社はレバレッジ比率では非常に不利に取り扱われる可能性がある。
  • 2010年の夏ごろは,IASBによる保険契約の公開草案の公表,G-SIIsの検討の開始,ComFrameの検討の開始がほぼ同時期に始まった。ソルベンシー2でも同時期にQIS5が始まり,日本でもリスク計測の見直し,あるいはフィールドテストの実施など,世界的なモメンタムがあった。
  • ソルベンシー2では,さまざまな緩和措置が検討されている。
  • 世界の保険市場において,日本は約13%(特に生保が大きい)。欧州は37%,アメリカは27%なので,いずれにとっても日本と手を組むことは非常に大事になってくる。
  • カナダやオーストラリアは先進的な発想で規制を行なっているが,市場規模の割合が小さいので,取り上げられることは少ない。しかし,特にカナダなどの規制は,金融庁も注目している。
  • 日本のように,死んだ後にお金を残したいと思う国民は世界にはあまりいないようで,生きているうちにお金が欲しいと思っている人たちが多いということが,世界的には一般的。
  • 監督制度上,変額年金は,日本では保険商品として捉えられているが,アメリカでは純粋な投資商品として扱われており,監督もSECが行なうことになっている。
  • 主要国の負債評価を「市場整合度」と「保守性レベル」という2軸で考えると,日本とアメリカは近い位置にあり,スイスとEUは近い位置にある。
  • 日本の保険会社のリスク特性は,以下の通り:
    • 生保は,「終身保険に代表される超長期保証が主力。また,90年代から続く低金利環境がある。
    • 損保は,大規模自然災害リスクへのエクスポージャー,特定準備金による損失吸収能力。
  • 規制上でモデルを使うといった場合,バリデーションがうまくいかないと,規制上の利用がかなり難しい。

ソース:
https://www.actuaries.jp/member/fileview.php?file=/lib_file/5812.pdf
日本アクチュアリー会 会員専用サイト「ライブラリー」より閲覧可能。

20 March, 2014

SOAでCERAを目指した方がラクなんじゃないか?という話

CERAとは,下のリンク先にある通り,「アクチュアリーによる最も包括的でグローバルなエンタープライズ・リスクマネジメント(ERM)の資格称号」です。アクチュアリーの守備範囲が,伝統的な「pricing actuary(適切な保険料率を計算するアクチュアリー)」ないし「reserving actuary(適切な準備金を計算するアクチュアリー)」から,「リスクマネジメントのスペシャリスト」から広がる(あるいは広げようとしている)中で,注目されている資格であります。
http://www.actuaries.jp/actuary/risk-management/cera.html

面白いのは,「CERA」というのはもちろん略語だけど,じゃあ何の略だよっていうと,大きく4つの可能性があること。
  • Chartered Enterprise Risk Analyst
  • Chartered Enterprise Risk Actuary
  • Certified Enterprise Risk Analyst
  • Certified Enterprise Risk Actuary
意味的にはどれもたいして変わらないけど,公認ERMアクチュアリー/公認ERMアナリストといったところですかね。
http://www.actuaries.org.uk/becoming-actuary/pages/cera-chartered-enterprise-risk-actuary-qualification

さて,普通に日本でCERAを目指すとなると,まずは日本アクチュアリー会の正会員であることが要件としてあって,その上でCERA試験・研修を受講する必要があります。この試験というのが,Institute and Faculty of Actuaries(IFA,英国アクチュアリー会)の 「ST9」という科目で,「問題は英文ですが、解答は日本語に限ります」っていうのがなんとも奇妙。つまり日本のアクチュアリー会としては,CERA資格用の独自の試験を作成せずに,IFAの試験に乗っかるかたちで,しかも問題文は英文のまま,解答は(採点者の都合上か)日本語で書くということです。
http://www.actuaries.jp/actuary/risk-management/cera_goal.html

ちなみに,日本では2012年から始まり,2013年10月の試験が2回目(年1回)で,ついこないだ,日本におけるCERAの第2期生が誕生しました。日本でも最近は,正会員になった人が次に受けるべき資格としてCERAが注目されております(リスク管理系の職務についていなくても)。IFAのサイトによれば,CERAはもともと2009年にUSのSOAによって開発され,とあるので,世界的に見ても新しい資格と言えましょうな。

で,ここからが本題ですが,上に書いた通り,日本におけるCERAへの正規ルートは,正会員であること(になること)が必要なんだけど,これって大変でしょ,と。正会員になるためには2次試験で2科目を受験する必要があるけど,それぞれ合格率は10%とかそんなところです。

片や。CERAは当然「グローバルな資格称号」なわけだから,日本でとろうがUSでとろうがUKでとろうが違いはない。で,USでCERAになろうとすると,要件としては下のリンク先のようになります。
http://www.soa.org/Education/Exam-Req/edu-cera-req.aspx

「10科目もあって余計に大変そうじゃん」と見えるかもしれないけど,
  • Exam PExam FMExam MFEExam Cの4つは,コンピューターベースのマルチプルチョイス。東京だと茅場町のプロメトリックセンターで受験できる。
  • e-Learning Courseは,文字通りeラーニング。
  • VEEとある2つは,「Validation by Educational Experience」の略で,要はその分野の知識があることを,他の資格とか大学での受講歴とかで証明してね,というやつ。
    • ちなみに,VEEは全部で3種類あるけど,CERAで必要とされるのはEconomicsCorporate Financeのふたつ。このふたつは,日本の証券アナリストの検定会員であれば満たせる。あるいは,Economicsだけなら,日本アクチュアリー会の準会員(以上)だと満たせる。
  • Enterprise Risk Management (ERM) Module は,eラーニングのコース。
  • Enterprise Risk Management (ERM) Exam は,4時間の筆記試験。US国内のほか,日本やUKはじめ世界各国で受験できる。
  • Associateship Professionalism Course (APC) というのは,プロフェッショナリズム研修みたいなものか。US国内と北京,香港でやるみたいだけど,旅行ついでに行けばいいかと。
という感じでございまして,僕が思うに,日本のアクチュアリー試験(特に2次試験)と違って,USのアクチュアリー試験は,努力がちゃんと報われる試験内容になっている(から,落ちたら自分の努力と準備が足りなかったって割り切れる)。Exam PからCの4つは,内容も面白い。

英語が苦でさえなかったら,いつ終わるともしれる日本の2次試験の合格を待ってからST9を受けるより,SOAでCERAを目指す方が精神衛生上よいと思っております。

19 March, 2014

スイス再保険「海上保険およびエアライン保険における最近の動向を探る 」,『シグマ』2013/4

「最新の動向を探る」というタイトルながら,なかなか馴染みの薄いMAT(Marine, Aviation, and other Transit: 海上,航空およびその他運輸)保険についての基礎知識を概観できるのが嬉しい。

【日本語版 】 「海上保険およびエアライン保険における最近の動向を探る 」
http://media.swissre.com/documents/sigma4_2013_jp.pdf

【英語版 】「Navigating recent developments in marine and airline insurance 」
http://media.swissre.com/documents/sigma+4_2013_en.pdf

  • 2012年における海上と航空の保険料は合わせて約440億ドル。それは10年前のおよそ2倍の水準だが,世界の損害保険料の2.2%にすぎない。(海上保険で380億ドル,航空保険で60億ドル)
  • ロイズマーケットおよびロンドンに拠点を置く国際的な保険会社で,世界の海上および航空保険料の約20%を引き受けていると推測される。
  • シンガポールはアジアにおける海上保険の主要拠点として浮上中。
  • 大規模保険事故の頻度は減少。しかしマーケットのソフト化などにより,MAT保険の基本的な収益性は低いまま。
  • 一般的に輸送保険会社は,輸送する乗客・乗務員および貨物にかかわる事業あるいは専門会社に対してリスク補償を提供する商業用保険証券と,輸送手段の個人的使用から発生する損害に対して個人または企業を付保するレクリエーショナル保険を区別している。
  • 一般的な輸送カバーには,Hull(船舶・機体),Cargo(貨物),およびLiability(賠償責任)の3種類がある。
  • 通常,航空の機体保険および賠償責任保険契約は「オールリスク」保険の形式をとっている。同様に,最新の海上保険契約では,列挙危険ベースではなく「オールリスク」で引受けられるのが一般的である。
  • 一般的な海上保険のタイプとして,航海保険および期間保険(voyage and time policies),評価済(協定価額)保険および評価未済保険(valued and unvalued policies),包括予定保険およびオープン・カバー(floating policies and open cover)がある。
  • 貿易は信用状によって資金調達されることが多いが,無保険の貨物に融資しようとする金融業者はほぼ存在しない。
  • 最近になって,シンガポールやインドネシアといった幾つかの市場における輸送保険の出再率が低下し,国内保険会社によるこの種のリスクに対する保有意欲の増加を示唆している。
  • プールとP&I組合は依然として重要。しかし,民間営利保険会社のリスク選好意欲が発達するにつれて,航空保険プールの重要性は減退。
  • 1980年代後半における海上保険の船舶損害率は,1つには船舶フリートの高齢化と質の低い操作基準に関連してクレームが上昇するという経緯があって急騰した。
  • 損害額の減少は,輸送機器防止装置の改善を軌を一にしている。
    • フライト100万回当りの死亡事故は,1996年には約3.0件だったのが,2012年には1.0件未満になるまで,減少を続けている。
    • 船舶の全損割合は,1996年には0.4%だったのが,2012年には0.15%未満になるまで,減少を続けている。
  • 長期間の損害実績と事業費を平均すると,海上保険とエアライン保険は依然として引受ベースで極めて僅かな収益しか生んでいない。
  • 航空事業においても,慢性貧血症のような収益性が,航空会社のリスク・マネージャーを一段と手強い交渉人に仕立てあげた。
  • 米国テロリズム危険防止法(TRIA)は,大きなエロ攻撃事件が発生した場合に連邦政府および保険業界が損害を分担することができるような官民リスク分担パートナーシップを確立させた。
  • 輸送手段における最新の進歩は,潜在的損害の評価と適切な保険料率の設定を一段と複雑なものにした。
  • 様々なリスクがますます相互に依存するようになり,同一事件から発生する大規模な集積損害に保険会社をさらす可能性がある。近頃のように損害事故頻度の減少が続くにしても,集積リスクの理解が乏しければ,想定外に多額な損害に遭遇する可能性がある。
  • 輸送保険における集積リスクには,以下のようなものがある。価値の集中(value concentrations),地理的な集中(geographical concentrations),保険契約者の集中(policyholder concentrations)。
  • 自然災害のエクスポージャーは輸送システムにおいて極めて重大であり,その理由は,特に暴風のエクスポージャーが主要港湾の近くで最も高くなることが多いからである。
  • ハリケーン・サンディは,5,000便以上の欠航を引き起こして世界の航空能力の9%に影響を及ぼした。2010年に発生したアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火後に立ち上った火山灰雲によって,100,000便が欠航し乗客1,000万人に影響が及んだ。
  • 欧州大陸の多くの大手保険会社は,海上保険を顧客に対する重要なサービスであり,他の商品の販売促進に役立つと見ている。
  • MATリスクはほかの事業種目と無相関である傾向があり,海上保険の船舶損害率と世界の損害保険損害率との相関係数は0.1未満と推定され,航空機体・賠償責任保険損害率と世界の損害保険損害率との相関係数は0.3未満である。さらには,この分散効果が欧州の新しいソルベンシーIIの自己資本規制にしっかりと盛り込まれている。
  • 一部の海上保険会社は,海賊行為の脅威が増したことを契機に,海賊関連損害向けの新しい保険商品を提供している。
  • 輸送セクターは,サイバー・リスク,すなわち情報技術インフラの機能停止の可能性や誤作動,悪用に特に脆い可能性がある。
  • 商品イノベーションの可能性が豊富に存在するのは,再生可能エネルギーの利用に関する分野である。
  • 一部の再/保険会社は,ますます複雑化し相互依存するリスクをより正確に理解するために,公式のモデルを開発している。
  • 保険会社は,テール・リスク・エクスポージャーの評価のために,ロイズ市場で日常的に使用されている現実災害シナリオ(Realistic Disater Scenarios)のような一段と伝統的な手法で補完している。
  • より正確かつ安全なデータ追跡システムの設計が,テクノロジー企業と連携して進められている(例えば,CargoNet)。
    • CargoNetは,米国ベースのデータベース・情報共有システムであり,貨物の盗難防止と回収率向上を目的としている。
  • 自然大災害エクスポージャーの重要性を考えれば,精緻なモデル作成能力を有する再保険会社は輸送リスクの評価と引受けにおいて重要な役割を果たす。
  • 歴史が示しているのは,大規模な予想外の損害が単独の根本原因によってもたらされることはまれであり,むしろ,複数のしばしば関係のない諸要素の組み合わせによる結果であり,この結合が壊滅的な打撃を生み出すということである。
  • 重要なことは,保険会社がソフトウェアとデータ分析をさらに活用して,熟達したアンダーライターの専門知識を活用することである。経験の浅いアンダーライターが業界団体に参入し,重要な損害事故に関する業界の知識も薄れていることから,これが特に重要になってくるだろう。
  • 新興市場の発展は一次産品価格の上昇に寄与している。一次産品価格の上昇はまた,貨物の金額だけでなく船舶と航空機の修理コスト,製造コストも押し上げており,保険会社のエクスポージャーにも影響を与えている。
  • 新興国の都市化も,所得増加と相まって輸送需要を増大させている。都市化の程度は旅客空輸と高い相関関係にある。

16 March, 2014

保険会社の収益性についてのファクターモデルはあるのか?

投資理論における,ファーマ=フレンチの3ファクターモデルについての記述を読んでいて,保険会社の収益性についてもファクターモデルのようなものが考えられるんじゃないか,と思ってググったら,こんな実証研究のペーパーが見つかった。

Hifza Malik, "DETERMINANTS OF INSURANCE COMPANIES PROFITABILITY: AN ANALYSIS OF INSURANCE SECTOR OF PAKISTAN"
http://lii.com.pk/uploads/4/5/5/7/4557001/inurance_companies_profitability.pdf

B. Charumathi, "On the Determinants of Profitability of Indian Life Insurers – An Empirical Study"
http://www.iaeng.org/publication/WCE2012/WCE2012_pp505-510.pdf

パキスタンとインドの研究,,,たまたまなのかどうか知らないけど,なぜかそのへんの地域から。

まず上のパキスタンのほうだけど,概要はこんな感じ。
ABSTRACT Insurance services are now being integrated into wider financial industry and the insurance sector plays an important role in service based economy of Pakistan. Profitability is one of the most important objectives of financial management because one goal of financial management is to maximize the owner's wealth and profitability is very important determinants of performance. This paper investigated the determinants of profitability in insurance companies of Pakistan. Specifically this examine the effects of firm specific factors (age of company, size of company, volume of capital, leverage ratio and loss ratio) on profitability proxied by ROA. A key indicator of insurance companies profitability is return on assets (ROA), defined as the before tax profit divide by total assets (TA). Profitability is dependant variable while age of company, size of company, volume of capital, leverage and loss ratio are independent variables. The sample in this study includes 35 listed life and non-life insurance companies which cover the period of 2005-2009. Secondary data obtained from the financial statements (Balance sheet and Profit/Loss account) of insurance companies, financial publications of State Bank of Pakistan and Insurance Year Book that is published by Insurance association of Pakistan (IAP). The findings show that there is no relationship between profitability and age of the company and there is significantly positive association between size of the company and profitability. The result also shows that the volume of capital is significantly and positively related to profitability. Loss ratio and leverage ratio showed negative but significant relationship with profitability.
Keywords: profitability, determinants, insurance.
だいたい訳してみると,
保険サービスは現在,広義の金融業界に統合されつつあり,保険セクターはパキスタンにおけるサービス産業において主要な役割を果たしている。金融マネジメントにおいて,収益性というのは最も重要な目的のひとつである,というのも,金融マネジメントのゴールのひとつは企業のオーナーの富を最大化することであるあり,収益性というのは企業成績の非常に重要な決定要素であるからだ。このペーパーでは,パキスタンの保険会社における収益性の決定要素について検証をする。特に,特定の要素(設立からの年数,規模,資本量,レバレッジ比率およびロスレシオ)が収益性に与える影響について,考察する。保険会社の収益性をはかる指標としてROAがあるが,これは税引前収益を総資産で除したものとして定義される。収益性を従属変数とし,保険会社の年数や規模,資本量,レバレッジ比率およびロスレシオを独立変数とする。このペーパーにおいては,35の上場企業(生損保)をサンプルとし,2005年から2009年のデータをとった。結論として,収益性と設立からの年数は無相関であり,収益性と資本量とのあいだには統計的に有意な正の相関が見られた。ロスレシオとレバレッジ比率については,収益性とのあいだに統計的に有意な負の相関が見られた。
といった感じで結論まで言い尽くされているけど,補足として,
  • 重回帰分析によって分析がなされた
  • 会社規模を表す変数は,総資産の対数値
  • レバレッジ比率は,純資産に対する負債の比率
  • 重回帰分析の結果,R2は0.898,自由度調整後R2は0.807
といったところでしょうか。

もうひとつのインドの論文だけど,概要はこんな感じ。
Abstract - The Indian life insurance industry is the least profitable market for its shareholders among all Asian countries due to fall in new business premium in 2010-11 in spite of the fact that it has reported net profit of Rs. 26.57 billion in 2010-11 as against net loss of Rs. 9.89 billion in 2009-10. However, the life insures' characteristics that are related to profitability have not been studied in the Indian conditions. In this context, the present study tried to model the factors determining the profitability of life insurers operating in India taking return on asset as dependent variable. This is an empirical study. The sample for this study include all the 23 Indian life insurers (including 1 public and 22 private) and it used the data pertaining to 3 financial years, viz., 2008-09, 2009-10 and 2010-11. For this purpose, firm specific characteristics such as leverage, size, premium growth, liquidity, underwriting risk and equity capital are regressed against Return on Assets. This study led to the conclusion that profitability of life insurers is positively and significantly influenced by the size (as explained by logarithm of net premium) and liquidity. The leverage, premium growth and logarithm of equity capital have negatively and significantly influenced the profitability of Indian life insurers. This study does not find any evidence for the relationship between underwriting risk and profitability.
Index Terms— Profitability, Indian Life Insurers, Financial Performance.
ざっと訳すと,こんなところか:
インドの生保業界は,2009年から2010年の新契約保険料の落ち込みより,アジア各国の中で株主に対する収益性が最も低い。その期間の純利益は26.57bnルピー,純損失は9.89bnルピーであった。しかし,収益性に関連する生保会社の特性は,インドの状況に対しては研究がされていなかった。この論文では,ROAを従属変数として,インドでビジネスを行なっている生保会社の収益性を決定づける要素を検証する。これは実証研究である。23のインドにおける生保企業(うち公営企業が1,民営が22)をサンプルとし,2008-09, 2009-10 および 2010-11の3つの会計年度のデータを用いた。独立変数としてレバレッジ,規模,保険料の伸び,流動性,引受リスク,および株主資本をとり,回帰分析を行なった。結論として,インドの生保会社の収益性に対し,規模(純保険料の対数値として定義)および流動性が統計的に有意な正の相関を持つことが分かった。レバレッジ,保険料の伸び,および株主資本(の対数値)は,収益性に対して統計的に有意な負の相関を持つことが分かった。引受リスクと収益性との関係については,何も得られなかった。
パキスタンの研究と当たらずとも遠からずってとこだけど,補足として,
  • レバレッジは,準備金÷(株主資本+剰余金)として定義
  • 流動性は,資産÷負債として定義
  • 引受リスクは,支払い保険金÷純保険料として定義(≒ロスレシオじゃん)
  • 業界全体の動向,規制の変化などは含まれていない。また,金利や保険会社数,インフレ率などのマクロ環境も考慮されていない
ということでございます。

14 March, 2014

3.14は円周率の日.Happy Pi day!

http://en.wikipedia.org/wiki/Pi
ftp://pi.super-computing.org/pub/pi10m/pi10m.ascii.01of10

pi = 3.
1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 8628034825 3421170679 8214808651 3282306647 0938446095 5058223172 5359408128 4811174502 8410270193 8521105559 6446229489 5493038196 4428810975 6659334461 2847564823 3786783165 2712019091 4564856692 3460348610 4543266482 1339360726 0249141273 7245870066 0631558817 4881520920 9628292540 9171536436 7892590360 0113305305 4882046652 1384146951 9415116094 3305727036 5759591953 0921861173 8193261179 3105118548 0744623799 6274956735 1885752724 8912279381 8301194912 9833673362 4406566430 8602139494 6395224737 1907021798 6094370277 0539217176 2931767523 8467481846 7669405132 0005681271 4526356082 7785771342 7577896091 7363717872 1468440901 2249534301 4654958537 1050792279 6892589235 4201995611 2129021960 8640344181 5981362977 4771309960 5187072113 4999999837 2978049951 0597317328 1609631859 5024459455 3469083026 4252230825 3344685035 2619311881 7101000313 7838752886 5875332083 8142061717 7669147303 5982534904 2875546873 1159562863 8823537875 9375195778 1857780532 1712268066 1300192787 6611195909 2164201989 3809525720 1065485863 2788659361 5338182796 8230301952 0353018529 6899577362 2599413891 2497217752 8347913151 5574857242 4541506959 5082953311 6861727855 8890750983 8175463746 4939319255 0604009277 0167113900 9848824012 8583616035 6370766010 4710181942 9555961989 4676783744 9448255379 7747268471 0404753464 6208046684 2590694912 9331367702 8989152104 7521620569 6602405803 8150193511 2533824300 3558764024 7496473263 9141992726 0426992279 6782354781 6360093417 2164121992 4586315030 2861829745 5570674983 8505494588 5869269956 9092721079 7509302955 3211653449 8720275596 0236480665 4991198818 3479775356 6369807426 5425278625 5181841757 4672890977 7727938000 8164706001 6145249192 1732172147 7235014144 1973568548 1613611573 5255213347 5741849468 4385233239 0739414333 4547762416 8625189835 6948556209 9219222184 2725502542 5688767179 0494601653 4668049886 2723279178 6085784383 8279679766 8145410095 3883786360 9506800642 2512520511 7392984896 0841284886 2694560424 1965285022 2106611863 0674427862 2039194945 0471237137 8696095636 4371917287 4677646575 7396241389 0865832645 9958133904 7802759009 9465764078 9512694683 9835259570 9825822620 5224894077 2671947826 8482601476 9909026401 3639443745 5305068203 4962524517 4939965143 1429809190 6592509372 2169646151 5709858387 4105978859 5977297549 8930161753 9284681382 6868386894 2774155991 8559252459 5395943104 9972524680 8459872736 4469584865 3836736222 6260991246 0805124388 4390451244 1365497627 8079771569 1435997700 1296160894 4169486855 5848406353 4220722258 2848864815 8456028506 0168427394 5226746767 8895252138 5225499546 6672782398 6456596116 3548862305 7745649803 5593634568 1743241125 1507606947 9451096596 0940252288 7971089314 5669136867 2287489405 6010150330 8617928680 9208747609 1782493858 9009714909 6759852613 6554978189 3129784821 6829989487 2265880485 7564014270 4775551323 7964145152 3746234364 5428584447 9526586782 1051141354 7357395231 1342716610 2135969536 2314429524 8493718711 0145765403 5902799344 0374200731 0578539062 1983874478 0847848968 3321445713 8687519435 0643021845 3191048481 0053706146 8067491927 8191197939 9520614196 6342875444 0643745123 7181921799 9839101591 9561814675 1426912397 4894090718 6494231961 5679452080 9514655022 5231603881 9301420937 6213785595 6638937787 0830390697 9207734672 2182562599 6615014215 0306803844 7734549202 6054146659 2520149744 2850732518 6660021324 3408819071 0486331734 6496514539 0579626856 1005508106 6587969981
......

13 March, 2014

柯隆「習近平政権下の中国経済」,『証券アナリストジャーナル』52(2),pp.56-66

  • 2013年6月と8月に中国に出張し,景気は経済統計より悪くなっていると実感した。その根拠として,広州から深圳までの間で見かけたコンテナトラックの数が1,2年前に比べて激減している。数%という減り方ではなく何分の1という感じである。広州−深圳高速道路は中国の国際貿易の大動脈であり,コンテナトラックの激減は実体経済が著しく減速していることを意味する。
  • アベノミクスに倣ってか,中国ではリコノミクスという言葉が出ていているが,李克強首相の政策目標ははっきりしない。アジェンダ,ロードマップも出ておらず,何をリコノミクスと称しているのか,よく分からない。
  • 鄧小平は神ではなかったが,まるで神であるかのように人々から崇められた。強烈なカリスマ性のある指導者だった。それ以降は江沢民,胡錦濤,習近平と徐々に普通の人になった。
  • かつての共産党はプロレタリアートの政治政党だったが,現在はイデオロギーで束ねられている政党ではなくなった。江沢民,胡錦濤,習近平の3人は『共産党宣言』や『資本論』を読んでいないだろうし,習近平が『毛沢東語録』を読んでいるとは到底思えない。2011年末現在,8,200万人以上の共産党員がいるが,彼らの多くは,共産党員になれば幹部になり易く,幹部になれば権益(benefit)を得られる,という理由で党員になっているのである。
  • 2012年9月に大規模な反日デモが起きたが,これは愛国教育のせいではない。中国社会の不安と不満が乗数効果で蓄積され,ちょっとしたことで火がつきやすいという性格を持ってしまっている。
  • いつかどこかの時点で「中国の特色ある社会主義」を実質的に外さなくてはいけないのではないかと私は考えている。なぜなら,絶対的な権力を持っているところは必ず腐敗するからである。
  • 現在の中国は改革をしなければ革命が起きるという瀬戸際に追い詰められている。
  • インドには身分制度があり,4つのカーストの外(最下層)にアウト・カーストが約2億人いると言われている。中国は社会主義国家なので身分制度はないはずだが,分けてみるとインドと同じ5層になる。
  • 中国社会がこれから安定するかどうかについては,二つの鍵がある。一つは,都市部住民のうち,どれくらいの人が中間層として台頭してくるか。中間部が台頭しない国は安定しない。もう一つは,農村部住民がどれくらいボトムアップされるか。ボトムアップされなければ必ずと言っていいほど農民一揆(革命)が起きる。
  • 過去2000年の中国の歴史を振り返ると,社会構造は全く変わっておらず,何十年,何百年ごとに下克上が起こるという循環も変わっていない。下から上へ富を巻き上げるスピードは速いが,上から下への富の再配分は遅いため,富は上に蓄積する。
  • 中国国家統計局が公表しているジニ係数は0。475だが,これはかなり美化された数字だろう。
  • 最近,IMFもOECDも世界銀行も中国に関する統計は全て甘くなっていると感じるが,いずれの国際機関も資金不足で,中国からお金を取りたいという思惑があり,バラ色の数字を見せるようにしていると聞いている。
  • ローエンドの産業を温存しながらハイエンドの誘致をする。中国は未だに地方政府が一つの国のように保護経済をしている。保護主義という考え方があるが故に,産業構造の転換が遅れている。
  • 中国では本土で大量の石炭を燃やしているが,脱硫,粉塵などの処理が杜撰である。オリンピックを前に,鉄鋼など一部の工場を沿岸部に移転させたが,旧市街では暖房や炊事にも石炭が使われている。
  • オリンピックの時には,北京市内を走行できる車をナンバーで規制し,ある程度の効果が期待された。しかし車を買うのは富裕層であり,富裕層にとって車は足である。ナンバー規制をしても1台買い足すだけではないかと私は見ていた。実際,2008年の北京ナンバーの車は300万台だったが,2012年末には600万台を突破している。
  • 多くの中国企業はあまりイノベーションに関心がない。応用的,臨床的な研究はするが,ファンダメンタルな研究開発(基礎研究)をしない。(。。。)中国が熱心でないのは,知的財産権が十分に保護されていないからである。日本企業は中国企業に知的財産権を侵害されていると言うが,実は中国自身が最大の不利益を被っていることに中国は気が付いてない。
  • 現在,中国に進出している日本企業は約25,000社だが,その約3分の1が赤字である。
  • 赤字経営とは言え,閉鎖するのも難しい。創立者がまだ生きているからである。今でも日本の大企業は70〜80代の名誉顧問,相談役を多く抱えている。現在の経営陣は,先代の社長が創った会社を潰すことができない。これは日本企業の体質の問題である。
  • 日本では「失われた20年」と言われるが,何が失われたのか,と尋ねると,答えられない日本人は意外に多い。日本企業が,特に中国のような新興国において,最も失ったものはブランド力だと私は思う。
  • 日本企業は応用編の研究開発はするが,デザインに関する研究はしない。製造の現場に行くとエンジニアしかいない。エンジニアは性能(function)を作るが,デザイナーは色や形,最終的にはvalueを創る。
  • 1980年代の中国では(。。。)女性が結婚相手に求める3種の神器は三菱の冷蔵庫,ナショナルの洗濯機,ソニーのカラーテレビだった。
  • 今後,日本企業は中国のアセットをリアロケーションする必要がある。中国に残すもの,東南アジアにシフトするものを選別し,最適化を図らなければならない。
  • 靖国参拝の問題や歴史認識の問題は,ある種の面子の問題で,時間が経てば薄れていく。しかし今回は領土・領海の問題なので妥協しにくく,解決しにくい。
  • 極論を言えば,所有権を決めるのは国力の問題である。現在,日中間でそれが決まらないのは,世界第2位と世界第3位の経済大国で,戦うわけにはいかないからである。
  • 日本が中国から尖閣諸島を,韓国から竹島を,ロシアから北方領土を守る,あるいは取り戻すために考えることはただ一つ,国力を如何に強化するかである。

「また御勉強?」

「また御勉強?」
 細君は時々立ち上がる夫に向かってこう云った.彼女がこういう時には,いつでもその語調のうちに或物足らなさがあるように津田の耳に響いた.ある時の彼は進んでそれに媚びようとした.ある時の彼はかえって反感的にそれから逃れたくなった.どちらの場合にも,彼の心の奥底には,「そう御前のような女とばかり遊んじゃいられない.おれにはおれですることがあるんだから」という相手を見縊った自覚がぼんやり働らいていた.
夏目漱石『明暗』

結城浩氏,「2014年度日本数学会賞出版賞」を受賞

結城浩氏が,『数学ガール』の功績を認められ,「2014年度日本数学会賞出版賞」を受賞したとのこと.素晴らしい!!
http://www.hyuki.com/d/201403.html#i20140312220000

といいつつ,まだ読んだことがないので,これをきっかけにポチリします.

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12 March, 2014

吉羽要直「ストレス状況を勘案した相関構造とリスク合算」

日本銀行ワーキングペーパーシリーズ 2013年 > (論文)ストレス状況を勘案した相関構造とリスク合算

要旨

金融機関の多くでは、株式と債券を含む有価証券ポートフォリオの市場リスク量を計算する場合に分散効果を勘案している。本邦のように、過去十数年間、金利と株価の変動に正の相関がみられる場合などには、現行実務で用いられている手法を用いたポートフォリオ全体の市場リスク量は、株式・債券それぞれ単体でのリスク量の和と比較した場合に無視できない差が発生し得る。しかし、近年の欧州債務危機で観察されているように、株価が下落するとともに金利が上昇するような状況では、分散効果は限定的になることが考えられる。

そこで、本稿では、コピュラの概念を用いて株式・債券単体のリスクとリスクの相関構造を分離して計測する。具体的には、相関構造の裾依存性や正負の相関を勘案できる様々なコピュラを取り上げ、コピュラを推定するデータについても時点や地域を変えながらリスク量を計測する。このように、相関構造に関してストレス状況を勘案し、合算ポートフォリオのリスク量計測に関する特徴や留意点を示す。

キーワード:コピュラ、多変量分布、裾依存性、リスク合算、経済資本

全文

抜粋
  • 本邦の近年のデータでは、金利変動と株価変動に正の相関(株価が下落するときに金利も低下<債券価格は上昇>すること)が観察される。
  • こうした合算ポートフォリオのリスク評価は、計測方法によってはリスク量を過小評価する可能性が高い。この問題に対処するため、コピュラを用いたリスク合算が利用されている。
  • こうしたコピュラの考え方を応用して、ストレス状況をリスク計測に織り込むことも考えられる。
  • コピュラとは、変量間の相関構造を示す関数である。線形相関では、2変量の相関の強さをマイナス1からプラス1のあいだのひとつの数値で表現する。これに対して、コピュラは変量間の関係を関数で表現するため、相関の強さを変量の大きさによって変えることができる。
  • 各リスクファクター(株価の日次変化率、金利の日次変化幅)の単独の分布(周辺分布)は、分散共分散法(VCV法)では正規分布を想定しており、ヒストリカル法(HS法)では経験分布を想定しているが、それぞれの欠点を克服するため、本稿では、歪みと尖りを捉えられるパラメトリックな分布として、1次元のスキューt分布を周辺分布に採用する。
  • 通常の計量分析では,2変量の同時分布を1つのデータセットで同時に推定する.一方,コピュラを用いた計量分析では,同時分布を周辺分布とコピュラに分解しており,周辺分布の推定とコピュラの推定を別々のデータセットで行うことができる.周辺分布とコピュラが別々に推定されても,周辺分布にコピュラを適用することでポートフォリオの同時分布を得られる.このように,分離して推定し(estimate with separation),結合して分析する(analyze with combination)ことが可能になる点がコピュラを用いる利点である.
  • この利点を用いると、ストレス状況におけるコピュラを推定し、平時データから推定される周辺分布と結合することで、ストレス状況の相関構造を勘案したリスク量を算出することもできる.
  • 具体的なアルキメディアンコピュラには、ガンベル(Gumbel)コピュラ、クレイトン(Clayton)コピュラ、フランク(Frank)コピュラなどがある。Basel Committee on Banking Supervision [2010]でもこの 3つのコピュラが取り上げられている.
  • いずれも、1 パラメータでコピュラを表現するという共通点を持つが、上下の裾依存係数に特徴的な違いがある.すなわち、ガンベルコピュラは上側裾依存性が強く、クレイトンコピュラは下側裾依存性が強いのに対して、フランクコピュラは上下に裾依存性がなく,対称である.
  • 本稿では,リスクファクターの相関構造に焦点を当てて,相関構造にどのようにストレス状況を織り込むべきかを議論した.本稿の分析を用いれば,周辺分布とコピュラの双方にストレスを与えたストレステストを行う際に,両者の寄与を別々に把握することが可能となる.
  • リスク量計測において,リスクファクターの分布が変化していくことが考慮されていない場合には,単一の線形相関(正規コピュラ)では合算リスク量を過小評価する可能性があるため,ストレス状況でも耐えうるリスク量を見積もることができるコピュラを精緻に検討することが望まれる.この点は,本稿で扱った市場リスクだけでなく,全行的な経済資本を見積もる際にも望まれる点である.

[論文]高スキル労働者の転職行動|日銀

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j03.htm/

要旨
本稿では、高スキル労働者として「技術職」、「専門職」、「管理職」の3職種に着目し、近年の転職動向について事実整理を行った上で、転職パターンの違いや転職による賃金の変化について実証的に検証した。

本稿の分析の主な特徴は以下の2点である。まず、転職後の産業・職種の性質が転職前と比べて、どの程度近いか(「スキル距離」)を定量的に測定して転職パターンを検証した。また、高スキル労働者のうち、職務内容や属する産業が大きく異なる「技術職」と「専門職」を区別して転職パターンや転職前後の賃金変化の違いを分析した。

主な結果は以下のとおりである。第一に、高スキル労働者に対する企業の中途採用意欲は強いとみられる一方、高スキル労働者の転職率は他の職種と比べて低位にとどまっている。さらに、転職率は、学歴が高くなるほど、企業規模が大きくなるほど低下する傾向にある。第二に、高スキル労働者の中でも、職種によって転職パターンや転職前後の賃金の変化は異なる。「管理職」は前職と異なる(「スキル距離」が遠い)職種へ転職する傾向がある。一方、「技術職」と「専門職」は、前職と似かよった(「スキル距離」が近い)産業や職種へ転職する傾向が強い点で共通しているが、転職後の賃金については、「技術職」の方が高まる傾向がある。ただし、これらの職種に限らず、大企業から他企業へ転職する場合には転職後の賃金の低下は大きい。この点が、とりわけ大企業での就業率が高い「技術職」のマクロでみた転職率の低さに影響している可能性が窺われる。


(感想)
内容としては,上の要旨に書かれている通り.「たぶんそうだろうね」と多くの人が思っているであろうことを,実証的・数値的に分析・検証した,というところか.

このペーパーのいちばんのキモだと思うのは「スキル距離」で,転職前後の産業・職種がどの程度近いのか遠いのかを表現するもの.
「スキル距離」は、労働政策研修・研究機構(2012)が公表する職務内容基準数値を用いて算出する。職務内容基準数値は、実際にその職業に従事する労働者にアンケート調査を行 い、スキルを多角的に数値化したものである16。スキル項目は、下図のとおり、各職業について①職業興味、②価値観、③仕事環境、④スキル、⑤知識の 5 つのカテゴリにそれぞれ 5~7 つの項目、合計 30 個ある。たとえば、①職業興味には、「現実的」「研究的」「芸術的」など 6 つの項目がある。数値は 30 名以上のデータを収集できた601の職業について算出されている。サンプル数は全体で21,033名である。
だそうです.これら30項目の数値を用いて,ふたつの職業間の「スキル距離」をユークリッド距離として求めた,と.最終的に集約された55職種に対して,そのすべての組み合わせ(1485通り?)に対してスキル距離が算出されたらしい.

松島憲之「アナリストの分析における非財務情報の活用」,『証券アナリストジャーナル』52(3),pp.56-66

  • 非財務情報に関しては,欧州を中心に,ESG(環境,社会,ガバナンス)をはじめとした非財務情報の適切な開示や,その制度化を求める動きが強まっている.日本でも,非財務情報の重要性を意識した動きが始まっており,「世界知識資本・知的資産推進構想(World Intellectual Capital/Assets Ititiative)」の日本組織であるWICIジャパンが,統合報告書を意識したレポートを発表している優秀な企業の表彰などを行うことになった.
  • 法定ディスクロージャーとして,最も代表的なものが有価証券報告書である.そして,民間規制による適時開示として決算短信がある.これらは財務情報が中心であり,決算報告書やバランスシート,キャッシュフロー計算書などがある.一方,非財務情報には,経営者や従業員の状況,事業環境などに加えて,CSR報告書や知的財産報告書などがある.
  • 企業価値の説明要員に占める非財務情報の割合は増加傾向にあり,この非財務情報を開示する重要性が増している.
  • アナリストは,当然ながら財務諸表から財務内容を中心に分析するが,売上高や利益率が上昇・下降する要因について,財務諸表だけでは分からないことも多い.そのような場合に,非財務情報を活用することで,より明確に,変化の要因を突き止めることができる.
  • アナリストにとっては現場体験が重要である.それは,工場見学で実際に観察してきたことや生産ラインが企業収益へ及ぼす影響についての考察などが,アナリストレポートの説得力を高める背景のひとつとなるからだ.
  • 非財務情報開示の目標は,企業価値の向上につなげていくことである.ディスクロージャーが優良な企業には共通項が見られる.
    • 第1に,財務情報と非財務情報との統合化を進め,財務情報の変化を言葉で保管し分かりやすく読み手に伝えていることができていること.
    • 第2に,事業戦略の道筋が明確化されていること.
    • 第3に,自社にとって特徴的な要因を「見える化」すること.
  • 証券アナリストは,企業価値を分析し,それが株価に正しく反映されているかを考察し,投資家に投資アイデアを提供することである.
  • 例えば,自動車業界であれば,先ず自動車販売協会や自動車工業会などが発表するデータをベースに業界や企業分析を行い,次のその分析を補完するために企業訪問によるヒアリングを行うことで,収益予想などの仮説を構築しレポートを作成する.
  • 非財務情報は,工場見学や経営トップとのミーティングなどで得ることが多い.加えて,財務情報以外の情報を,あらゆる方面から入手しようと努力することもアナリストの本質的な仕事である.
  • 日常生活の中にも情報は溢れており,常に意識して入手していかなければならない.例えば,テレビの「サザエさん」は,長らく東芝の単独コマーシャルであったが,ある時からマクドナルドなどの複数企業によるコマーシャルに変わった.これは,東芝の財務余力が低くなった可能性を示している.
  • 非財務情報で特に重要性が増しているのは,知的財産である.
  • 株価は,リスクに対して過剰に反応しやすいために,企業は中長期の経営戦略の中で,リスク対応についても語る必要がある.
  • 非財務情報から得られる情報は「パズルの一片」のような断片的情報であり,すぐに結論が分かるものではないが,この断片的な情報を集めて,結論となる全体像を導き出すのがアナリストの能力である.
  • これまでと違った経歴の経営トップが出てきたときには,注意が必要となる.富士重工業の現社長である吉永泰之氏は管理系の出身であるが,直前まで,国内を中心とした販売のトップであった.富士重工業も水平対向エンジンなどの優れた技術を持っているが,販売力に少し欠けるところがあった.現在では,その販売力が強化され,米国では,世界で最もインセンティブが低いメーカーとなり,高い価格で販売ができている.
  • 残念ながら,日本では,(WICIで)表彰された企業でも,KPIが十分に説明されている水準までには達していない状況にある.アニュアルレポートや統合報告書において,株価について記述している部分はあるが,株価パフォーマンスについて,経営者が評価した内容の文章を記述しているレポートを見たことはほとんどない.


11 March, 2014

Calder, et al. "Cat Model Blending" 6. Works Cited

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  7. Chhabra, A., & Parodi, P. (2010). Dealing with sparse data. GIRO. Liverpool: UK Actuarial Profession.
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  11. Diers, D. (2008). Stochastic modelling of catastrophe risks in DFA models. ASTIN Colloquium, (p. 19). Manchester.
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  22. Kerley, C., & Margetts, S. (2006). Top down / bottom up correlation. GIRO. Vienna: UK Actuarial Profession. 
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  38. Woolstenhulme, M., & Major, J. (2011). Model Risk in Financial Systems: The Need for Robust Decision Control. CAGNY Fall 2011 Meeting, (p. 50).


Calder, et al. "Cat Model Blending" 5. Final Words

"Cat Model Blending - Techniques and Governance"
Alan Calder, Andrew Couper, Joseph Lo, Aspen (Respectively, Group Head of Catastrophe Risk Management, Chief Actuary and Chief Risk Officer of Aspen Bermuda, and Head of Actuarial Research & Development.)
13 August, 2012

目次はこちら
http://ykkactuarial.blogspot.com/2014/03/calder-et-al-cat-model-blending.html


5.1 Solvency II
  • ソルベンシー2のもとでは,複数モデルの使用は(単一のモデルの使用に比べ),手間のかかる作業をより生みかねない
  • ソルベンシー2のもとでは,内部モデルは適正なレベルの文書化が求められる.Catモデルの結果に調整を加える際には,一般的な原則を記すことも可能だろうが,モデルに加えたすべての調整の詳細(と評価)を文書化することは,はるかに大変.

5.2 Non-Modelled Perils
  • Catモデリングは実務に定着しているが,モデルのカバーする範囲や内容,あるいはその程度は完全ではない.特に,グローバルなエクスポージャーを抱える会社にとっては.

5.3 Future Direction for Blending Approaches
  • コンポーネントレベル(ハザード,脆弱性,ファイナンシャル)でのブレンディングは難しいが,状況は変化しつつある.透明性が求められている.

Calder, et al. "Cat Model Blending" 4. Governance

"Cat Model Blending - Techniques and Governance"
Alan Calder, Andrew Couper, Joseph Lo, Aspen (Respectively, Group Head of Catastrophe Risk Management, Chief Actuary and Chief Risk Officer of Aspen Bermuda, and Head of Actuarial Research & Development.)
13 August, 2012

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4 Governance
  • Catモデルの使用に際して,しっかりと確立されたガバナンスのフレームワークが構築されている必要がある.これは,モデルの選択やモデルの妥当性の評価などといった,Catモデルの使用まつわるすべての側面を考慮に入れる必要がある.ソルベンシー2などの規制要件などからも,十分なエビデンスと文書化が求められる.
  • いくつかのガバナンスの形態が考えられる.ひとつの極は,唯一のモデルを使うという「集中化された」アプローチで,一貫性が保てるという長所がある反面,システミックエラーの問題が存在する.もうひとつの極は,引受単位ごとにモデルを選択・検証する方法で,各単位ごとに最適なモデルが選択できる反面,一貫性の問題がある.
  • このセクションでは,モデルブレンディングがCatモデルの使用のガバナンスにどのような影響を与えるかを考察する.


4.1 Governance of the standard agreed blend
  • モデル評価のプロセスは,アサンプションや限界も含めた,モデルの完全なレビューから始まる.モデル会社から膨大な文書が提供されることもしばしば.文書のレビューもさることながら,モデルのテストが重要.その際に,モデルのアサンプションとアウトプットにわけて検討する.
  • アウトプットを検証する際に,いくつかの参考となるエクスポージャーを用いる.業界全体,特定のポートフォリオ,ゾーンごと,などの損害額を見る.再現期間の長いところでは,他のモデル(他のベンダーの最新のモデル,同じモデルの古いバージョン,自社の最新のモデル等)のアウトプットと比較検証する.
  • 再現期間の短いところでは,自社の過去ロスとの比較も可能であれば行える.
  • 経験豊かなアンダーライターの意見も参考になる.
  • モデルのハザードコンポーネントや脆弱性コンポーネントについて,公開されているデータやヒストリカルデータなとと突き合わせて検証することもできる.

4.2 Governance of the bottom-up adjusted blend
  • アンダーライター,Catモデラー,アクチュアリーという3つのレベルでのピアレビューにより,調整プロセスのガバナンスがよりよく達成される.
  • ピアレビューは数理業務の一部であるべきだという意見に同意する声は多いが,ピアレビューに関する研究資料は少ない.全般的には(Kucera & Sutter, 2007) が,リザービングに関しては(Gibson, 2008) を参照.

日銀「ビッグデータ」、景気判断の秘密兵器に|日経

(有料会員限定)
http://www.nikkei.com/markets/features/53.aspx?g=DGXNMSFS0403N_05032014000000
日銀の調査統計局が景気予測の精度に自信を深めている。武器は、昨年秋に始めた約500もの経済統計を詳細に分析する「ビッグデータ」だ。景気の変調に先手を打つのが金融政策の王道。その判断材料となる精度の高いデータを政策委員に示せるか。調査統計局の重要性が増している。 
 「ビッグデータを使うことでGDPを公表の1カ月前に予測することが可能になりました」。調査統計局でマクロ経済分析を担当する原尚子さんは話す。GDPは鉱工業生産指数や第3次産業活動指数など幅広い統計を分析して予測する。例えば10‐12月期であれば、翌年1月時点で入手できる10月、11月のデータだけでビッグデータを使って12月分を推測し、四半期ベースのGDPを1カ月早く予測できるという。 
 ビッグデータによる景気判断は欧州中央銀行(ECB)などでも研究が進む。経済統計が新たに発表されるたびにデータが更新され、予測値の精度はさらに増す。「手作業でデータを積み上げてきたこれまでと比べ、全く違うアプローチで経済予測をつくることができる」(亀田制作経済調査課長)という。 
金融政策を担う企画局も調査統計局への信頼を強めている。「調査統計局はこれまでも、消費者物価指数(CPI)であれば3カ月先までコンマ数%の精度で予測していた」(企画局幹部)。日銀は昨年4月、マイナスだった物価上昇率が13年度に0.7%まで高まるとの見通しを打ち出した。「強気すぎる」との市場の見方に反して、足元の物価が日銀の予測通りに進んできたのは周知の通りだ。
「European Central BankBig Data」 で検索したら,こんなものが見つかった.

ECB call for papers on Big Data
The European Central Bank (ECB), in cooperation with the International Institute of Forecasters, is pleased to announce that the 12th International Institute of Forecasters workshop, on nowcasting and forecasting using big data, will take place in Frankfurt am Main on 7 and 8 April 2014.
このエリアで研究が進んでいる(あるいは進めようとしている)様子がうかがえますね.014年4月7-8日に開催されるというワークショップの発表資料にも注目してみよう.


ベッチャー「ERM ~日本のリスク管理体制を確認しつつ、米国の統計と比較を行う~」

日本アクチュアリー会の「アクチュアリージャーナル 第86号」に掲載されていた,昨年7月の例会の報告.内容は,会員専用サイト「ライブラリー > アクチュアリージャーナル > 第86号(2013年)」で見られる.
  • 発表者のデイビッド・ベッチャー氏は、RGA インターナショナル・コーポレーションのグローバル・ファイナンシャル・ソリューション担当のエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼、最高執行責任者.「同部門のプライシング、リスク管理、商品開発、業務管理を管轄され,アクチュアリーとして,保険業界に 30 年以上の経験を有し,生命保険業界の財務ニーズに関してグローバルで豊富な専門知識を持たれております」とのこと.
  • 内容は,以下の通り:
    • ERMの概要
    • ティリングハスト社ERM調査の要点
    • CROカウンシルおよびCROフォーラム
      • ComFrame - CROのERM調査
    • RGAのERMプログラム概要
  • 例会当日は,その場でアンケートの回答・集計できる器械が持ち込まれ,発表の内容(おもに米国でのERMの状況に関する統計)とオーディエンスの回答が都度都度比較されるという,インタラクションが行なわれた模様.
  • 「ERMの概要」では,ERMの定義,リスク管理のフレームワーク,リスク許容度・リスク限度額・リスク選好,ERMプロセス,といった概念の整理.
  • 「ティリングハスト社ERM調査の要点」での質問は,以下の通り:
    • リスク選好あるいはリスク許容度を規定する文章を文書化するプランがありますか?
      • 「はい」の場合,リスクの種類は?
      • 「いいえ」の場合,いつまでに策定する予定か?
  • 「CROカウンシルおよびCROフォーラム ComFrame - ERM Survey of CROs」での質問と回答は,以下の通り:
    • 貴社のリスク管理体制は?
      • 独立しているが,リスク管理部門に正式なリポーティングラインがある
      • 独立しているが,リスク管理部門に非正式にリポーティングしている
      • 事業部門から独立している
      • 分散化しているが事業部門に根付いている
      • 一元化しているが,事業部門にも根付いている
    • ERMに関連する事項はどのように決定されますか?
      • 会社全体のリスク管理委員会のコンセンサス
      • 経営会議のコンセンサス
      • CEO
      • 会社全体のリスク管理委員会の委員長
      • 多数決
    • グループ内で,CROとCFOの役割はどういう関係にありますか?
      • CROとCFOは同僚かつパートナーの関係にある
      • CROとCFOは,それぞれ独立し明確に定義された役割をもつ
      • CROとCFOには,いくつかのリポーティング体制がありうる
    • グループ内で資本管理の責任をもつのは?
      • CRO
      • CFO
      • 両方
    • グループ全体のリスク管理評価において,各国のリスク管理部門が果たす役割は?
      • グループのリスク部門のためにリポートを策定する
      • グループのリスク部門と事業部門によるリスクに関する討議を促進する役割
      • 事業部門のためにリポートを策定する
      • 事業のリスク管理実務を監督する
      • グループの役員のためにリポートを策定する
      • 事業のリスク管理に責任をもつ
    • グループのリスクプロファイルの評かはどのように行いますか?
      • グループレベル
      • 事業会社レベル
      • グループおよび事業会社の組み合わせ
      • グループおよび事業会社それぞれ別々に
    • グループの資本管理は連結ベースで行いますか? それとも,事業会社,サブグループ,または事業部門がそれぞれ個別に資本を管理できますか?
    • グループレベルでは何に基づいて資本を管理していますか?
      • 社内の期待値
      • 格付機関の期待値
      • 監督当局の期待値
    • グループ全体のリスクの見方はどのように得られるか?
      • 一元化されたモデル+共通のアサンプション・シナリオ・ストレス
      • 一元化されたモデル+アサンプション・シナリオ・ストレスは共通ではない
      • 分散化されたモデル+共通のアサンプション・シナリオ・ストレス
      • 分散化されたモデル+アサンプション・シナリオ・ストレスは共通ではない
      • 一元化されたモデルと分散化されたモデルの組み合わせ+共通のアサンプション・シナリオ・ストレス
      • 一元化されたモデルと分散化されたモデルの組み合わせ+アサンプション・シナリオ・ストレスは共通ではない
    • グループのリスクプロファイルをどのように評価しますか?
      • 分散・共分散フォーミュラおよびシミュレーション
      • ストレスを定義づけたシナリオ
      • リスクの依存関係をとらえるシミュレーションに基づくアプローチ
      • リスク全体で合算
      • 商品全体で合算
      • 相関マトリクスを用いた分散・共分散フォーミュラ
      • リスク資本実績の単純加算
    • ComFrame(共通の枠組み)のドラフトに基づくグループの資本評価に対するシナリオベースのアプローチに関して,内部モデルをどのように用いますか?
      • いずれの規制基準にも関連しない,市場整合的バランスシートを用いて資本を評価
      • グループ最上位の親会社の規制会計基準
      • 上記親会社より下位の事業会社の規制会計基準を用いて資本を評価
    • 監督当局はどのようにグループ全体の資本評価を行うべきか?
      • 連結ベース
      • 事業会社ベース
      • 両方
    • グループがリスクの影響度を示す他の方法は?
    • 提案中のComFrameのグループ資本評価プロセスでは「リスク感応的な」バランスシートに重点が置かれているが,これは大きな懸念材料になるか?
  • 「RGAのERMプログラム概要」では,RGAにおけるERMの目標および指針,ERMのフレームワーク,ERMの歴史,推進体制,委員会体制について説明がなされた.

10 March, 2014

Calder, et al. "Cat Model Blending" 3. A Technical Solution

"Cat Model Blending - Techniques and Governance"
Alan Calder, Andrew Couper, Joseph Lo, Aspen (Respectively, Group Head of Catastrophe Risk Management, Chief Actuary and Chief Risk Officer of Aspen Bermuda, and Head of Actuarial Research & Development.)
13 August, 2012

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3.1 Tables and Notations
  • 技術的な詳細の話に移る前に,データテーブルについて説明をしておく.
  • Year Event Table(YET)はもっともシンプルなかたちのテーブルで,以下の要素からなる:
    • SimulationYear(整数).n回目のシミュレーションであることを表わす.
    • LossNumber(整数).n回目のシミュレーションの中で起こるCatイベントに振られる番号.そこでk個のイベントが起これば,LossNumberのフィールドは1からkまで走る.
    • ComponentName.シミュレートされた各イベントに対し,ロスの額が参照されるべきコンポーネントの名前.
    • EventID.シミュレートされた各イベントに対し,イベントセット内のイベントを特定する.
    • SUPercentile(0から1までの実数).シミュレートされたイベントのロスの額のパーセンタイル値.
  • ELT(Event Loss Table)は,アクチュアリーがCatロスのシミュレーションを行なう際に,最も馴染み深いであろうテーブル.
    • EventID.全体のイベントセットの中から引かれる.各EventIDは,特定のCatイベントを表現している.
    • Rate.各イベントが1年のあいだに発生する確率.絶対的な発生確率であることもあるし,相対的な数値(他のイベントの発生確率と比較して)であることもある.絶対的な発生確率である場合,そして各イベントが独立して起こると仮定した場合,解釈が2種類あって,ひとつはベルヌーイ分布に従う(だから年に1回のイベントが起こるか否か),もうひとつはポワソン分布に従う(だから理屈上は同じイベントが1年に複数回起こりうる).通常はポワソン分布に従うと仮定する.各イベントが独立ではない場合は,負の二項分布を仮定することが多い.
    • LossAmount.各イベントに対する損害額.脆弱性とファイナンシャルのモジュールから算出される.
    • イベントごとのロスには不確実性が存在する.これを二次の不確実性(secondary uncertainty)と呼ぶ.ちなみに一次の不確実性は,そのイベントが起きるかどうか.その分布を表現するために,期待値・標準偏差・最大損害額といったパラメータが与えられている場合もある.
  •  複数のELTを統合する場合:
    • EventIDが同じからELTが違ってもRateは同じはずだから,統合ELTではそのRateを各イベントの発生確率として使う.ELT間でRateが異なっている場合は,その理由を調べる.
    • LossAmountについて,統合ELTにおけるひとつのイベントの期待値や最大損害額は,各ELTにおけるそのイベントの期待値や最大損害額の和になる.
    • LossAmountの標準偏差に関しては,リスクの分散の様子によって取り扱いが変わってくる.
  • YLT(Year Loss Table)形式のテーブルは,特にクラスタリングイベントが起こるペリルにおいて,広まりつつある.ELTにない長所として,複数のイベント間の結びつきを表現できることがある.SimulationYear,LossNumber,LossAmountの3つから構成されるが,最初のふたつはYETの,最後のひとつはELTのそれらと同じ.
  • 複数のYLTを統合する場合は,SimulationYearとLossNumberをマッチさせる.

3.2 Standard Agreed Blend

  • 加重平均をとる際のウェイトの選択は,サイエンスというよりアートの要素が強い.(Cook, 2011) はスコアリング・アプローチを提唱し,(Major, 2011) もまた別の提唱をしている.その選択は難しいが,
    • 明らかに劣るモデルに対しては,ゼロの重みづけをすることがありうる.
    • 同等の重みづけ(2つのモデルの場合は50:50)をすることがありうる.これは,どのモデルも同等に良いと評価されるか,あるいはひとつのモデルにより多くの重みを配分する積極的な理由が見当たらない場合に採用される.
  • シミュレーションの回数の決定について,
    • シミュレーション回数を増やすとシミュレーションエラーが減少する(回数Nの平方根に反比例).
  • p = 0.5% とした場合の,二項分布のシミュレーションエラーの信頼区間(再現期間による).
  • ELTからYETを作る際は,通常はモンテカルロ・シミュレーションによって行なわれる.YLTからYETを作る作業は単純.
  • 二次の不確実性を契約の前に適用するか契約の後に適用するかによって,結果にはかなりの差が出る.
  • 二次の不確実性の相関関係について,もっとも保守的なスタンスとしては,各イベントについて,すべてのポートフォリオが完全に相関しているというものだが,まったく非現実的であるというわけでもない.例えば,フランスの Windstorm Lothar や,ニュージーランドのクライストチャーチにおける地震のような,エクストリームなイベントのような場合.
  • (Cook, 2011) では,シミュレーションレベルでのFrequencyブレンディングを提唱している.
  • イベントのマッチングについて.モデルAとモデルBをブレンドする場合,理論上はAからのイベントとBからのイベントをマッチさせることもできるかもしれないが,正確に行なうのは事実上不可能かも.この場合,イベントをグループ分けしてマッチングさせるということもありうるかも.
  • シミュレーションエラーは,YLTのときも起こりうる.

3.3 Bottom-up adjustments
  • ボトムアップの調整では,各ポートフォリオの損害額を調整することを目指す.損害額を一様にスケールする場合もあるし,再現期間ごとに異なる値でスケールする場合もある.
  • 一様にスケールする場合でも,その理由を記録しておくことが(内部監査等の理由により)大事.スケールする理由としては,エクスポージャーの増加,データクオリティの調整,ノンモデルドロスの調整,経験の反映,などが挙げられる.
  • 分析の結果,ある再現期間から下の損害額については経験により信頼度を置き,それより上の再現期間でブレンディングを行なうということもある.
  • OEPを調整する方法と,FrequencyとSeverityに分解してSeverityを調整する方法があるが,Catの世界ではより理解されやすいOEPを調整する方が望ましい.
  • 再現期間がリモートなところでは,SeverityカーブとOEPカーブ(そしてAEPカーブ)は近づく.リモートなところでは,ひとつ大きなCatロスが支配的になるから.
  • スケールするパラメータを線形補完することで,調整後のOEPカーブをスムーズにできる.


SOA の Exam MLC がはるかに難しくなっていた(ことに気付いた)

昨日,Exam MFE(Models for Financial Economics)を受験・合格して,次の狙いをMLC(Models for Life Contingencies)にしようかC(Construction and Evaluation of Actuarial Models)にしようか考えていろいろ探っていたところ,こんな事実を知ってしまった.

http://www.actexmadriver.com/Assets/ClientDocs/prod_preview/MLCSM.pdf
A new version of Exam MLC is launched in Spring 2014. The new Exam MLC is significantly different from the old one, most notably in the following aspects:
  • (1) Written-answer questions are introduced and form a major part of the examination.
  •  (3) The level of cognitive skills demanded from candidates is much higher. In particular, the new learning objectives require candidates to not only calculate numerical values but also, for example, interpret the results they obtain.
  •  (4) Several new (and more advanced) topics, such as participating insurance, are added to the syllabus.
ってな感じで,2014年春試験からシラバスが変わったこと自体知らなかったけど,筆記の回答が必要となったり,テキストブックがACTEXのものからCambridge University Pressのものに変わったり,ちょっと1か月半では対応できそうにないな...去年のうちに受かっておくべきだった.

ということで,6月のExam Cに狙いを定めます.その前に証券アナリスト2次があるけど.


07 March, 2014

Calder, et al. "Cat Model Blending" 2. Catastrophe Model Blending

"Cat Model Blending - Techniques and Governance"
Alan Calder, Andrew Couper, Joseph Lo, Aspen (Respectively, Group Head of Catastrophe Risk Management, Chief Actuary and Chief Risk Officer of Aspen Bermuda, and Head of Actuarial Research & Development.)
13 August, 2012

目次はこちら
http://ykkactuarial.blogspot.com/2014/03/calder-et-al-cat-model-blending.html


2 Catastrophe Model Blending
  • Section3でブレンディング方法の詳細に入る前に,このSection2では一般的な議論を進める.
  • Catモデルブレンディングのひとつの(自然な)解釈として,モデル内の関数や計算式をブレンドする,という方法がある.
    • 例えば「ハザードの部分はモデルA,脆弱性関数の部分はモデルB,ファイナンシャルの部分はモデルCを用いる」という方法がある.(これは Model Fusion と呼ばれたりする.) これがうまくいけば透明性の高いモデルになるだろうが,実際は難しい.
    • ライセンスの問題もあるし,どのモデルのどのパートがベストかを判断するには,データ量や判断する専門性の問題もある.
  • このペーパーでは,これ以降,モデルブレンディングといった場合,モデルのアウトプットのブレンディングを指すこととする.

2.1 Two Natural Ways of Blending
  • ふたつの自然なブレンディング方法がある.すなわち,SeverityアプローチとFrequencyアプローチである.それについて説明し,frequencyアプローチの方が優れていることを示す.
  • Severityアプローチとは,とある再現期間における損害額を,複数のモデル結果の(加重)平均として表現する方法である.
    • Severityブレンディングで加法性を満たすCatモデルを構築するのは容易ではない.
    • シミュレーションベースでSeverityブレンディングを実現するのも難しい.
    • 仮に「100年に1度」の数字を見る場合,モデルAにおける100年に1度のイベントがモデルBにおける100年に1度のイベントと一致している保証はない.
  • Frequencyアプローチとは,とある損害額の発生確率を,複数のモデルにおけるそれぞれの発生確率の(加重)平均として表現する方法である.
    • Frequencyブレンディングはシミュレーションベースで実現が容易.
  • ロスコスト(AAL: average annual loss)の(加重)平均を計算する際,Frequencyブレンディングはそれに整合的だが,Severityブレンディングは(免責などがあってクレーム額がロスに対して線型でない場合など)整合的でない場合がある.
  • (ペーパー内では,グラフを用いたSeverityアプローチとFrequencyアプローチの比較)
    • Severityアプローチはふたつのモデルの損害額の情報の平均をとるので,たとえば一方のモデルのエクストリームな結果を拾えない.
    • 逆にFrequencyアプローチでは,再現期間の長いところで,損害額の大きなモデル結果に近づく.

2.2 Arithmetic and Geometric Averages
  • 平均をとる際には算術平均と幾何平均があるが,このペーパーでは算術平均の立場をとる.
  • 相加・相乗平均の関係からわかるように,SeverityアプローチとFrequencyアプローチの両方において,幾何平均による結果は算術平均による結果より低くなる.
  • Limit(填補限度額)やDeductibles(免責)がある場合,幾何平均の結果は不安定になりがち.
  • 種々の理由から,以下,このペーパーでは常に算術平均を仮定する.

2.3 Literature on Model Blending
  • 2005年の Florida Hurricane Catastrophe Fund (FHCF) のレポート (Florida Hurricane Catastrophe Fund, 2005) において,業界全体およびより細かいレベルの数値において,ブレンディングの使用が引き合いに出された.
    • そのレポートの Exhibit V(および Section E of Exhibit I)では,複数モデルの結果の加重平均(Severityブレンディング)が採用されているように見られる.
  • (Grossi & Kunreuther, 2005) の Section 4.5.1 でも,フロリダのハリケーンについて,Severityブレンディングのアプローチが見られる.
  • 2011年には,複数モデルの使用について,少なくとも2つのディスカッションが世に出た.
    • ロンドンでのワークショップで発表された (Cook, 2011)
    • 12月に発表された (Guy Carpenter, 2011)
      • 方法論を強調した (Cook, 2011) に対し,model uncertainty に力点が置かれている.
      • Model Fusion (異なるベンダーモデルのコンポーネントを再構成して新たなモデルを構築する)についても言及している.
  • Cookのワークショップは,ブレンディングの具体的で現実的な方法論が提示された.
    • Severityブレンディングは「Common Approach」,Frequencyブレンディングは「Alternative Approach」と称され,その対比の中で,Frequencyブレンディングの方がよりよいとしている.
    • 加重平均をとる際の重みづけについても議論がなされた.そこでは「スコアカードアプローチ」が提示されている.
  • アイデアは ABI guide (Garnons-Williams & Zink, 2011) に引き継がれた.
  • (Devlin, 2008) では,EPカーブの調整(再現期間ごとに異なる額によるスケール)の可能性が挙げられている.


06 March, 2014

Calder, et al. "Cat Model Blending" 1. Introduction

"Cat Model Blending - Techniques and Governance"
Alan Calder, Andrew Couper, Joseph Lo, Aspen (Respectively, Group Head of Catastrophe Risk Management, Chief Actuary and Chief Risk Officer of Aspen Bermuda, and Head of Actuarial Research & Development.)
13 August, 2012

目次はこちら
http://ykkactuarial.blogspot.com/2014/03/calder-et-al-cat-model-blending.html

1.1 The Purpose of the Paper
  • 通常,複数のモデルを使うときには,以下の行動をとると思う.
    1. それぞれのモデルからの結果をとる.
    2. それぞれの結果を比べ,さらに,独自のより定量的なアセスメントと比較し,各モデルの強みと限界を浮き彫りにする.
    3. このアセスメントに基づき,加重平均をとるために各モデルに重みづけをする.
  • このペーパーの目的は,この日々のプラクティスをCatの集積リスクの定量化に対しても適用することである.
  • 上記の3番目は,さまざまな理由により実行されているケースは少ないと思う.そこで,以下の提案をしたい:
    • 開示性(openness)
    • ブレンディングに関する技術的・概念的な議論を深く理解する
    • ガバナンス
1.2 Catastrophe Modelling
  • Catモデリングは(再)保険の世界では1980年代後半から用いられている.
  • Catモデルは通常,引受における以下のふたつの過程で用いられている.
    • プライシング用に,個別のリスクによるロスの期待値と標準偏差,および(再)保険契約からロスが発生する確率の算出.
    • あるひとつのペリル,あるいはすべてのペリルを想定した際の,集積リスクの定量化.通常は,パーセンタイル(あるいはその逆数である再現期間)で表現されるか,確率論的キャピタルモデルに直接データを流し込む.
  • Catモデルに関する詳細は,以下のペーパーを参照のこと:
    • The UK Actuarial Profession organises regular catastrophe modelling seminars – a recent one was held in March 2011, with speakers from major catastrophe modelling companies, as well as from actuarial practitioners. In particular, the present paper will regularly refer to the slides from the talk (Cook, 2011).
    • At least two recent GIRO Working Parties considered natural catastrophes and reported back: one in 2002 (Sanders & others, 2002) and then in 2006 (Fulcher & others, 2006). The 2002 report deals with extreme events in general, with its Section 4 devoted to catastrophe modelling. The 2006 report discusses catastrophe modelling, with a focus on North Atlantic hurricanes.
    • In the US, the Casualty Actuarial Society organises annual Ratemaking and Product Management Seminars. The March 2009 and March 2010 seminars both had catastrophe modelling workshops, the slides of which can be downloaded.
    • (Grossi & Kunreuther, 2005) is a collection of essays that introduces catastrophe modelling, including consideration of how natural hazards are assessed and the topic of uncertainty. Insurance applications also feature in this book.
    • (Woo, Calcualting Catastrophe, 2011) is a thoughtful – and thought-provoking – account of the subject. It considers catastrophes more generally, citing recent financial catastrophes as examples. It can be considered as a second edition to (Woo, The Mathematics of Natural Catastrophes, 1999).
1.3 Types of Uncertainty
  • 不確実性(uncertainty)には2種類ある.
    • Epistemic uncertainty: 知識の不確実性.ハザードに関する情報や知識の欠如に起因する不確実性.
    • Aleatory uncertainty: 偶然による不確実性.地震や風災・水災などの自然災害に本来的に備わっている不確実性.
  • これに加えて「Implementation uncertainty(実施にまつわる不確実性)」というカテゴリーが加えられるかも.完全なモデルであっても,それを作るのは人間であり,人間がかかわる以上ミスはつきものである.あるいは,計算の限界に起因する近似の問題など.
  • Epistemic uncertainty はデータや知識を増やすことで軽減できる.また,Implementation uncertainty も軽減できる.しかし,Aleatory uncertainty は,モデルやモデリングの実行をどうしようとも軽減できない.
  • Catモデリングにおいては,Epistemic uncertainty が非常に大きな割合を占める.
  • このペーパーでは,まったく独立に開発された複数のモデルを用いて,これらのuncertaintyにどう対処するかを検討する.
1.4 The Pricing Process
  • プライシングは,すべての引受のプロセスにおいて重要な位置を占める
  • ある種目に対して,technical priceは機械的に計算され,以下の要素から構成される
    • ロスコスト(the expected cost of all claims that could be suffered by the company)
    • 経費(Loadings to cover internal expenses and external costs)
    • 利潤(profit margin)
  • Catペリルのロスコストは,通常エクスポージャー分析で計算され(exposure rating),Catモデルは基礎として用いられる.必要に応じて経験をもとに計算される(experience rating).
  • Catモデルの使用には困難が付きまとう.入力するエクスポージャーデータの正確性や妥当性は,シミュレーション結果に対して重大な影響を与える.
  • 考慮されるべき点:
    • すべてのペリルがモデルに組み込まれたか? そうじゃないとしたら,どう対処するか?
    • Catモデルに対するビューは?
      • 二次の不確実性(secondary uncertainty)の有無
      • demand surgeの有無
      • fire-followingの有無
    • 不確実性に対する調整をどうするか
    • 社内(あるいはグループ内)に研究開発チームがあり,独自のモデルあるいは独自のビューがある場合,それをプライシングにどう取り込むか?
  • 利潤のサイズは,何らかのかたちで,リスクのサイズに関連しているべき.
1.5 The Accumulation Process
  • Catモデルからは,通常2種類のアウトプットが得られる
    • OEP:ある年の最大のロスの分布.occurrence exceedance probability カーブ.
    • AEP:ある年のロスの合計の分布.aggregate exceedance probability カーブ.
  • これらの数値は,会社全体のポートフォリオに対して見られる場合もあれば,特定の地域・ペリルに対して見られる場合もある.
  • 各ペリルに対して,それがどうモデルされるべきかというビューを,保険会社は持っているだろう.すなわち,ひとつのベンダーモデルを用いるか,複数のモデル結果をブレンドするか.会社にとって重要なペリルに対しては,慎重なモデル評価(model evaluation)を要する.
1.6 Pricing and Accumulation Example: UK and France Windstorms
  • 1990年の Windstorm Dariaと1999年の Windstorm Lothar というふたつのイベントが,ヨーロッパの風災のモデルの開発に拍車をかけた.が,画一した手法がなかったりデータの欠損があたりしたため,同じようなエクスポージャーデータからさまざまな結果が算出された.
  • 最近のふたつのイベントに関して,マーケット全体のロスの違いはモデル間で10%以内におさまるようになってきたが,個々のポートフォリオについては最大で40-45%の差が出るし,その差の方向もまちまちである.
  • Catモデルは脆弱性関数(vulnerability functions)に関して「加重平均」のアサンプションを採用していることに起因する.
  • アクチュアリルモデル(DFAモデル)とCatモデルの組み合わせを用いるのが望ましい場合もある,特に,特殊なエクスポージャーの場合は,高頻度のロスの定量化に対しては.
  • 実際,Catモデルによる小中規模のストームの数値は,過去の経験と合わないケースもある.
1.7 Use of a Single Unadjusted Model
  • ベンダーモデルをひとつだけ(多分,グローバルなカバー範囲が最も大きいモデルをひとつだけ,あるいは,各地域・ペリルに対してそれぞれひとつだけ)用いるのが,もっとも簡単だろう.
  • その際,モデルにまつわる文書化も比較的容易になる.これは,ソルベンシー2の世界では重要.
  • しかし現実には,単一のモデルの使用はシンプルすぎるし,オペレーショナルリスクの要因となる.
  • 単一のモデルを使用することから生まれる「モデルエラー」の問題も視野に入れる必要がある.
1.8 Use of Multiple Models
  • 現実では,個別のリスクをプライシングする際,アンダーライターは起こりうるロスに関してさまざまなビューを持ち,それら結果を比較し,モデル間で大きな違いがある場合にはその理由を求める.
  • Catモデルに関しては,引受に先立ち,あるいは引受を検討する際の材料として,以下の3つを材料にする.
    • 外部のCatモデルは,リスクに関する包括的なビューを提供する.ライセンスのコスト等はかかるが,それと引き換えに,(モデル会社が開示できる範囲内で)リスクの定量化に関する専門家の助けを借りることになる.複数の外部モデルの使用は,同一のリスクに関する異なったビューを得る手助けになる.
    • 当該リスクに関する自社のビューを考慮に入れる.それはモデルブレンディングであったり,時に自社モデルの利用だったりする.モデルブレンディングのアプローチは,各外部モデルに対する独自の評価の抽出(distillation)であると考えられる.内部のCatモデルが利用できる場合は,アンダーライターはモデリングのアサンプションに関してより明確に知ることができる.
    • Experience rating も.その際,Exposure rating の結果と比較される.
  • 外部モデルは往々にしてブラックボックス化されている.
  • 脆弱性関数に関する問題を解決するひとつの手段が,モデルブレンディング.
  • 再現期間の低いところでは経験を用い,高いところで専門家のジャッジメントを用いるということもありうるが,一貫性という点で困難を伴う.
  • モデルブレンディングに伴う現実的な問題としては,さまざまなブレンディング方法からどの方法を採用するか,あるいは加重平均するとしてその重みづけをどう決定するか,という点が挙げられる.
1.9 Comments on the Use of Multiple Models
  • 複数のモデルの使用に関する,格付け機関のコメントを見てみる.
    • S&Pはプレスリリースの中で,自然災害のCatボンドにおけるCatリスクを評価する際には,3大モデル会社のうち少なくとも2つを用いることが好ましいとしている.そのクライテリアの中では単一のモデルの使用も認められているが,「複数のモデルの利用はマーケットにおける透明性を高め,"model shopping" のリスクを提言する」と強く主張している."model shopping" とは,担当者が望ましい結果を出すモデルを意図的に選択することを意味している.
    • A.M. Best は,基本的に単純平均の立場をとり,必要に応じて加重平均をとる.しかしいずれにしろ,どうしてそのような手法をとったか,なぜそれが会社のCatエクスポージャーをもっともよく反映する手法なのかを,説明できることが期待される.
  • 複数のモデルを用いる際,モデル間の結果の違いを検証すると思うが,それによって,外部モデルを理解し評価するめのフレームワークが明確になり,より多くの情報に基づいた意思決定ができるはず.
1.10 Quantitative Feedback Loops
  • Catモデルを使うことは,非常にレアなロスイベントを評価する手段として今考えられる中でベストな方法だとみなされているが,多くの限界も散見される.それらの限界は,データとアサンプションに関連している.
  • 高頻度のイベントについては,データのレゾリューションの問題などがある.これを解消するため,高頻度のところは経験をもとにしたカーブを用い,それをCatモデルのカーブと合成することも考えられる.

05 March, 2014

Corrigan, "Advancements in Implementing Operational Risk, Stress Testing and Risk Appetite for ORSA"

日本アクチュアリー会 平成25年度例会 第6回
2014年3月5日

"Advancements in Implementing Operational Risk, Stress Testing and Risk Appetite for ORSA"
Joshua Corrigan, Principal, Milliman

(IAJの会員はここからダウンロード可能)
  • ERMは,個別にリスクを分析する黎明期,ALMやバランスシート(しかしその大部分はファイナンシャルリスク)が意識されたERM1.0の時代を経て(ここまで Prediction の時代),現在はリスクを包括的にとらえるERM2.0の時代にいる.そして次のフェーズは,リスク文化とResilience(回復力)が意識されるERM3.0の時代となるだろう.
  • ORSAはグローバルスタンダードになりつつある.
    • リスクとソルベンシーの自己評価が,ビジネスディシジョンに結びついているか?
  • バランスシート上のリスクは相互に関連している.
    • リスクアペタイトをどのように細分化・具体化(cascade)し,意味のあるリスクリミットにつなげるか.
  • PLの構成要素を上から分解し(Sales, Distribution Costs, ,,, & Operating Profit Margins),それぞれに付随するリスクを把握する.
    • エマージングマーケットではBSよりPLの方が大事.
  • Prediction(複雑なモデルを構築して数字を作る)≠Explanation(リスクのドライバーは何で,結果に影響を与えるのは何か?)
  • "World Economic Forum; Global Risks Map 2013"
    • 複雑な体系を見るとき,各パーツを積み上げて検証したところで,全体を理解したことにはならない.
    • リスクと要因,そして結果のあいだには,動的な関連がある.線形相関のような(依存関係をはかる)単純な指標は,ミスリーディングになりうる.
  • ERM2.0とERM3.0が取り組む課題
  • リスクとは氷山のようなもの.目に見える部分には(その発現として)CrisisやEventsがあるが,見えない部分にはPatternsやSystem Structureがある.目に見える部分は伝統的なリスク管理のフレームワークで対応できるが,目に見えない部分は「複雑系」として対応する.
  • Data is only part of the information set
    • 時に十分なデータがそろわない場合がある.その時は,expert judgement が必要.
  • Cognitive Analysis
    • リスクのドライバーとその結果との関係性を可視化
    • もっとも重要な要素を探す(東京の地下鉄で最も重要な駅を探すように)
  • 点推定を越えたデータの活用.
    • 従来型の点推定(e.g. ヒートマップ)ではなく,分布で考える.
  • Causal Modelling with Bayesian Inference
    • リスク要素の関連性を保持しながらのモデリング
  • All scientific fields use Bayesian statistics, so why don’t we!
  • Causal Model とは何か?
    • 要素間の関係性を可視化.Causal facotrs はビジネス用語で表現される.
  • Unsupervised vs Supervised Techniques
    • データが潤沢にある場合と,そうではない場合.
  • データはソリューションの一部でしかない.分析することで価値が増える.
  • 線形相関(係数)は非線形関係を捕捉できないが,mutual information sharingなら可能.

(余談)
プレゼン終了後,周りにいた人たちの会話を耳にするに,「オペレーショナル・リスクまわりで何か話が聞けると思って来たけど,そうでもなかった」「図とかグラフとかいっぱいあったけど,何を意味するのかよく分からなかった」という感想を持つ人がいた.

04 March, 2014

Calder, et al. "Cat Model Blending - Techniques and Governance"

"Cat Model Blending - Techniques and Governance"
Alan Calder, Andrew Couper, Joseph Lo, Aspen (Respectively, Group Head of Catastrophe Risk Management, Chief Actuary and Chief Risk Officer of Aspen Bermuda, and Head of Actuarial Research & Development.)
13 August, 2012

最近話題になりつつあるような、Catモデルブレンディングに関して、Aspenの関係者が書いたペーパー。60ページぐらいのPDF。上のリンクをクリックするとダウンロードできる。


Contents:
  1. Introduction
  2. Catastrophe Model Blending
  3. A Technical Solution
  4. Governance
  5. Final Words
  6. Works Cited

それぞれのセクションの概要は,以下の通り.
  • セクション1で,それ以降のセクションのおけるディスカッションの背景や動機を記す.
  • セクション2で,すでにあるブレンディング方法について検証し,それぞれの長所を議論し,好ましいアプローチを示す.
  • セクション3で,詳細なブレンディングの例を提示する(セクション2で示した”好ましいアプローチ”を用いて).また,個別ポートフォリオに対する調整のような,ブレンディングにまつわる幅広い問題を検証する.
  • セクション4で,Catモデルを使用する際のガバナンスについて記す.(とりわけ,セクション2・3で提示されたブレンディングに関連して)
  • セクション5で,その他のトピックを扱う.ソルベンシー2の話題に触れ,ノンモデルドペリルや将来的なCatモデルブレンディングについて触れる.
  • このペーパーの読者には,Catモデルのコンセプトおよびそのアウトプットに関する基礎的な理解を持っていることが想定されている.通常使われている用語に通じていることが望ましい.

長くなりそうなので,Sectionごとにpostします.


03 March, 2014

リスク管理戦略センターを設置|トーマツ

金融機関支援で培った経験を基に一般企業のフォワードルッキングなリスク管理を支援

有限責任監査法人トーマツは、近い将来に起こり得る様々なストレス事象に備えた一般企業のフォワードルッキングなリスク管理態勢の構築を支援するために、2014年2月、リスク管理戦略センター(センター長 大山剛、CRMS: Center for Risk Management Strategy)を設置しました。

フォワードルッキングなリスク管理とは、先行き起こり得るストレス事象(自社の収益や健全性にダメージを与えるような事象)を予め具体的に想定し、これへの対応策を練ることです。そして、このリスク管理手法を活用し、経営戦略遂行に伴う実際のリスクを、経営者が有するリスクアペタイト(目標を達成するために経営が取ろうと考えているリスクの水準付近)に制御する枠組みを「リスクアペタイト・フレームワーク」と呼びます。

多くの大手金融機関のストレステスト態勢の整備やストレスシナリオ作成支援や、フォワードルッキングなリスク管理・経営戦略を標榜するリスクアペタイト・フレームワークの構築等を支援してきた実績を基に、このたび一般企業向けにも支援を開始します。

リスク管理戦略センターの主な活動
  1. 各企業のストレス・シナリオの作成
  2. 特定のストレス事象の発生蓋然性をモニタリングする体制の整備
  3. 特定のストレス事象発生を前提としたコンティンジェンシー・プランの作成
  4. 大手金融機関に対するさらなるフォワードルッキングなリスク管理の強化支援
リリース全文


「保険会社向けの総合的な監督指針」及び「保険検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について

金融庁: 「保険会社向けの総合的な監督指針」及び「保険検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について
金融庁では、「保険会社向けの総合的な監督指針」及び「保険検査マニュアル」等の一部改正(案)につきまして、平成25年12月10日(火)から平成26年1月14日(火)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。その結果、80の個人及び団体から延べ156件のコメントをいただきました。本件についてご検討・ご意見をいただいた皆様には、ご協力いただきありがとうございました。本件に関してお寄せいただいた主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方は(別紙1)をご覧ください。 なお、本件と直接関係しないコメントもお寄せいただいておりますが、これについての回答は差し控えさせて頂いております。監督指針、告示、検査マニュアルについては、本日付で別紙2~別紙10のとおり改正し、本日から適用を開始します。
(別紙1)コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(PDF:312KB)
  • いろいろ笑えるやりとりがありますな
  • 今回の監督指針改正においては、保険会社におけるORSAの実施について記載しておりますが、ORSAレポートの監督当局への提出を義務化するものではありません。
  • 平成 25 年 9 月 4 日付「保険会社に対する ERMヒアリングの実施とその結果概要について」、平成 25 年 9 月 6 日付「平成 25 事務年度 保険会社等向け監督方針」において記載がある通り、監督当局への ORSA の報告の義務化については、検討中です。 
  • 本改正においては、統合リスク管理とは、統合的リスク管理手法のうち各種リスクをVaR等の統一的な尺度で計り、各種リスクを統合(合算)して、保険会社の自己資本等と対比することによって管理するものを指しております。保険検査マニュアル「統合的リスク管理態勢の確認検査用チェックリストⅢ.2.②(ⅱ)統合リスク管理への取組 脚注 18」をご参照下さい。
(別紙2)「保険会社向けの総合的な監督指針(本編)」の一部改正(新旧対照表)(PDF:336KB)
  • Ⅱ. 保険監督上の評価項目 で「II-3 統合的リスク管理態勢」を新設
  • リスクの軽量化にあたっては、例えばトータルバランスシートの経済価値評価によるなど、共通の基準の下で計量化することを基本としているか。
  • 通常の経済環境時には強い相関を示さない巨大災害リスクや市場リスクは、ストレス環境下では相関が高い可能性があるが、こうしたテールリスクの相関について検討や研究を行っているか。
  • リスク計量化モデルは、高度なモデルを導入したとしても、一定の限界が存在し、リスクを全て完全には捉えられないが、経営陣はこのようなモデルを理解しているか。
  • II-3-3-3 ストレステスト
  • II-3-5 リスクとソルベンシーの自己評価
  • 保険会社は、リスクとソルベンシーの自己評価にあたっては、中長期事業戦略(例えば3年から5年間)、特に新規事業計画に十分留意しているか。
(別紙3)「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)(少額短期保険業者向けの監督指針)」の一部改正(新旧対照表)(PDF:210KB)

(別紙4)「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)(少額短期保険業者向けの監督指針)(様式・参考資料編)」の一部改正(新旧対照表)(PDF:148KB)

(別紙5)「認可特定保険業者向けの総合的な監督指針(本編)」の一部改正(新旧対照表)(PDF:59KB)

(別紙6)「認可特定保険業者向けの総合的な監督指針(様式集)」の一部改正(新旧対照表)(PDF:55KB)

(別紙7)「保険業法施行規則第五十六条の二第二項第五号等の規定に基づく保険会社等の子会社が営むことができる業務から除かれる業務等(平成十年十一月二十四日金融監督庁・大蔵省告示第十四号)」の一部改正(新旧対照表)(PDF:15KB)

(別紙8)「保険検査マニュアル」の一部改定(新旧対照表)(PDF:262KB)

(別紙9)「金融持株会社に係る検査マニュアル」の一部改定(新旧対照表)(PDF:165KB)

(別紙10)「金融検査マニュアル」の一部改定(新旧対照表)(PDF:85KB)


以下、関連ブログ。

The アクチュアリー: 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の改正
「保険会社向けの総合的な監督指針」及び「保険検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等についてが、本日公表されました。 
来年、アクチュアリー試験で二次を受ける人は必須の教材ですね。熟読をお勧めします。一方、CERAに関係するかと言うと・・・ここでのコメントは差し控えさせて頂きます。

保険アナリスト植村信保のブログ: 保険行政と内部監査
「80の個人及び団体から延べ156件のコメント」とのことで、全61ページの大半が統合的リスク管理態勢に関するものでした。2011年の保険検査マニュアル見直しの時よりもずっと多いです。詳しくはご覧いただければと思いますが、明らかになった点も。 
まず、「統合リスク管理」と「統合的リスク管理」を使い分けていること。

監督当局へのORSA 報告の義務化は、「検討中」ということも確認されました。

今回のテーマである内部監査部門に関しても、興味深い回答がいくつかありました。 
保険行政(金融庁)は内部監査部門に対し、統合的リスク管理の有効性検証や、経営陣への提言(必要に応じ)を求めていることが明らかになりました。

この件に関する嶋田以和貴さんのブログ記事も面白かったのですが、残念ながらページを削除されたようです。RSSリーダーに残っている文章を個人的に楽しみます。


ロバート・J・シラー教授 ノーベル経済学賞 受賞記念講演

日本ファイナンス学会 「ロバート・J・シラー教授 ノーベル経済学賞 受賞記念講演」

【一般受付開始】ロバート・J・シラー教授 ノーベル経済学賞 受賞記念講演会のお知らせ

開催日:2014年03月10日
応募締切り日:2014年03月05日

日本ファイナンス学会は,行動経済学会と共催で,2013年度ノーベル経済学賞を受賞されたロバート・J・シラー教授による講演会を開催いたします。貴重な機会ですので,皆様ぜひお越しください。

日時:3月10日(月)18:00-19:30
会場:一橋大学一橋講堂2F中会議場 〒101-8439 東京都千代田区一ツ橋2丁目1番2(学術総合センター内)
http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/hitotsubashi.html

講師:Robert J. Shiller教授(Yale大学)

申込締切:3月5日(水) ただし,締切日前でも定員(240名)になり次第締め切らせていただきます。
講演は英語で,同時・逐語通訳はありません

シラー教授 略歴
Robert J. Shiller is Sterling Professor of Economics, Department of Economics and Cowles Foundation for Research in Economics, Yale University, and Professor of Finance and Fellow at the International Center for Finance, Yale School of Management. He received his B.A. from the University of Michigan in 1967 and his Ph.D. in economics from MIT in 1972. He has written on financial markets, financial innovation, behavioral economics, macroeconomics, real estate, statistical methods, and on public attitudes, opinions, and moral judgments regarding markets. He was awarded the Nobel Prize in Economic Sciences in 2013.

プログラムの最新版はこちらをご参照下さい

Venter, et al. "Value of Risk Reduction"

Gary Venter, Alice Underwood "Value of Risk Reduction"

「なぜコストをかけてまでリスク削減を行なうのか?」「リスク削減の価値は?」というシンプルな問いに向かう記事.もともとは CAS Exam 7 のスタディーノートとして著されたものらしい.

前半は「Costs of financial distress」「Agency issues」「Regulation and taxation」「Relationships with stakeholders」といった観点からの,(金融機関全般を想定した)論点の整理.次いで,保険固有のイシューとして,「Agency theory complications: policyholders as debtholders and/or owners」「Special vulnerability to effects of financial distress」「Reinsurance as the dominant form of hedging」が挙げられている.

後半では,定量的な例を提示.Risk-Reward chart (Efficient Frontier) や Cost of allocated risk capital といった概念を用いている. Final remarks として,「Key issues are avoiding financial distress and the need to re-capitalize. Quantification of the value of risk transfer in particular situations can be done in various ad-hoc ways, but the science is still under development and industry practice varies widely.」

感想
特段目新しいインサイトがあるわけではないが,論点の整理と,関連するペーパーのレファレンスとしては有用かもしれない.