20 May, 2014

[本]結城浩『数学文章作法 基礎編』ちくま学芸文庫

この本を含めて,ちくま学芸文庫は数学系の良書をたくさん出版されているけど,Kindle化されていないのが非常に残念。

数学文章作法 基礎編(ちくま学芸文庫)
結城 浩
筑摩書房
売り上げランキング: 7,130
  • あなたが文章を書くときの大きな目的は,あなたの考えを読者に伝えることです。
  • 読者のことを考える。これが文章を書くときに最も大切なことです。
  • 文章を書くときには「読者は何を知っているか」を意識する必要があるのです。
  • 読者は基本的に飽きっぽく,浮気性であり,あなたの文章を読むのをいつでも止める権利を有しています。
  • 読者に伝えたい内容が大切なものであるほど,形式をきちんと整えなければなりません。欠けたカップで出されたら,いくら美味しいコーヒーでも台無しでしょう?
  • 接続詞・副詞・指示語は,ひらがなで書いた方が読みやすくなります。
  • 「とき・こと・もの」を形式的に表現するときも,以下のようにひらがなを使いましょう。
    • ~する時 → ~するとき
    • ~する事 → ~すること
    • ~する物 → ~するもの
  • nで置き換えられるものはアラビア数字で書くと考えればいいです。
  • 任意の自然数は入らず,一,二,三などに限って使う表現や慣用句の場合には,漢数字を使います。
  • カギカッコ(「 」)は短い引用や発現に使います。二重カギカッコ(『 』)は書名に使います。
  • 列挙の順序を入れ替えてもかまわないときには,列挙の区切りにナカグロ(・)を使います。順序を入れ替えないときには,読点(、)やカンマ(,)を使います。
  • 「量xが増えたら,量yが増える」というだけでは,数学的には比例とはいいません。
  • 主張の内容がはっきりわかるなら良い文で,そうでなければ悪い文です。
  • 逆説ではない「が」には特に注意しましょう。
  • 引用は以下に示すルールを守って注意深く行なわなければなりません。
    • 出典を明記すること。
    • 引用範囲を明記すること。
    • 一字一句そのまま写し,改変しないこと。
    • 主従関係に注意すること。
  • 文章は,読者が既に知っていること(既知のこと)を先に書き,読者が未だ知らないこと(未知のこと)を後に書くのが自然です。
  • 順序がない箇条書きは,項目の順序を入れ替えてもかまわないものです。
  • 別行立ての数式とは,数式を文中に埋め込むのではなく独立した段落として提示さいた数式のことです。ディスプレイ数式ともいいます。(…)なお,読者を誤解させる危険があるので,誤りを別行立てで書いてはいけません。
  • 数式まじりの文章は,たとえ数式を「ほげほげ」と書き換えても読めるようになっていなくてはなりません。つまり,数式を塗りつぶしても文章の構造は正しくなっていなければならないということです。
  • 例は,概念を読者の心に描きます。(…)適切な例を挙げるのは,読者の心に概念の姿を正確に描く助けとなるのです。
  • 例は読者の理解を助けるものであって,著者が読者に自分の知識をひけらかすためのものではありません。
  • 良い例は良い理解から生まれます。もしも良い例が作れないなら,自分の理解を疑いましょう。
  • 解答を書かないのは著者の自由ですが,読者,特に独学している読者にとっては非常につらいことです。
  • 問いかけ型のタイトルを付けた場合,著者はその問いかけにきちんと答える文章を書かなければなりません。
  • 良い目次を作ろうとすることは良い見出しを作ることであり,良い見出しを作ろうとすることは良い文章を作ることにつながります。

参考文献

クヌース先生のドキュメント纂法
Donald E. Knuth Tracy Larrabee Paul M. Roberts
共立出版
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Mathematical Writing (Mathematical Association of America Notes)
Donald E. Knuth Tracy Larrabee Paul M. Roberts
The Mathematical Association of America
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理科系の作文技術 (中公新書 (624))
木下 是雄
中央公論新社
売り上げランキング: 224

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房 (2013-08-02)
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新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)
戸田山 和久
NHK出版
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[改訂第5版] LaTeX2e 美文書作成入門
奥村 晴彦
技術評論社
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16 May, 2014

数学入門公開講座(第36回)|京都大学数理解析研究所

今年もやってまいりました,京大RIMSの数学入門公開講座です。
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/kouza/
1. 趣 旨
数学はあらゆる科学の基礎をなすものです。今回の講座では、社会人、 中・高校教師、大学生等ある程度数学的素養のある一般の方を対象に、 専門的題材をわかりやすく解説しようとするものです。

2. 期 間
平成26年8月4日(月)から8月7日(木)まで
(8月8日(金)に、各講師に自由に質問・討論できるオフィスアワーを設けました)

3. 時 間
毎日午前10時30分から午後4時まで

4. 場 所
京都大学数理解析研究所 4階大講演室

5. 定 員
120名(先着順)

6. 受講料
4,500円
(テキスト代を含め全講義を通しての受講料で消費税を含みます。 受講決定通知後に受講料を納入願います。 一旦納められた受講料は、理由のいかんを問わず、一切お返しできません。 振込手数料は別途受講者負担とします。)
演題及び講師は,こんな感じ。
乗法的情報による加法構造の復元|講師・星 裕一郎
数や式に対するもっとも基本的な操作として、「加法(=足し算)」と「乗法(=掛け算)」があります。この加法・乗法という2つの操作は、非常に複雑に絡み合っており、例えば整数に関わる様々な問題の難しさは、ある意味において、この複雑な絡み合いに起因していると考えられます。一方、この絡み合いの1つの表れとして、数や式の適当な集まりに対して、そこで定義される加法を、その乗法的な情報によって記述・復元することができる場合があります。本講義では、そのようなタイプの数学的命題について、お話をしようと思います。

ビリヤードからシンプレクティック・トポロジーへ|助教・入江 慶
解析力学のハミルトンによる定式化では、位置と運動量を組にして相空間というものを考えます。相空間の幾何、特にその大域的な性質を調べる分野をシンプレクティック・トポロジーといって、近年盛んに研究されています。ハミルトン力学系の周期軌道の研究はその起源のひとつで、現在でもこの分野の重要な主題です。講演の前半では、例としてビリヤード球の運動における周期軌道について考察し、バーコフによる古典的な定理を紹介します。この定理にはすでにシンプレクティック・トポロジーの一端が表れており、後半はそれを手掛かりに、より現代的な話題に進みたいと思います。

楽して計算するには -アルゴリズムの設計と解析|准教授・牧野 和久
近年の情報化社会において、高速なアルゴリズムを設計することは極めて重要である。しかしながら、P vs NP問題に代表されるように、与えられた問題が効率的に解けるができるかどうかは、容易には分からない現状にある。本講義では、計算可能性,P,NPなどの計算量理論の基礎的な概念を説明すると同時に、高速アルゴリズム設計の意義や重要性を応用などを交えて議論する。その後、分割統治法や動的計画法などの高速なアルゴリズム設計のための手法およびその解析法を具体的な問題を用いて紹介する。それ以外にも、NP困難な問題に対する最適化の手法を用いた近似アルゴリズムの設計法も議論する。

15 May, 2014

Amlinとオックスフォード大学がシステミックリスクモデリングを共同研究

Amlin and Oxford University launch major research project into the Systemic Risk of Modelling
http://www.amlin.com/media/press-releases/2014/11-2-2014.aspx
The use of models by the insurance industry has contributed to a greater understanding of risk and more efficient use of capital. However, as the use of models becomes ever more prevalent, there is greater scope for systemic risk within individual companies and across the (re)insurance market. To promote a better understanding of this complex field, Amlin has commissioned the Future of Humanity Institute (FHI) at Oxford University’s Oxford Martin School to research the Systemic Risk of Modelling.
The initial findings of the research project will be released today at a conference in Oxford, which will include speakers from among some of the leading thinkers in the field of systemic risk. A unique feature of the research project will be to try to evaluate the role of human behaviour such as cognitive bias in the use of models, together with other approaches to complex systems such as network theory, alongside more conventional assessments of modelling. A particular focus of the project will be catastrophe modelling. The FHI enjoys a unique multidisciplinary position at the Oxford Martin School, as it brings together the best minds in a wide variety of fields such as mathematics, philosophy and science.
Nick Bostrom, Director of the Future of Humanity Institute, University of Oxford, said: “Over the past few years, systemic risk has grown into a major topic of interest for a variety of fields. Financial collapses and the increasing interconnectedness of key institutions suggest that the study of systemic risk warrants serious consideration. Some risks have extremely high stakes, so failure to understand and characterise these phenomena could be catastrophic. The Future of Humanity Institute is pleased to partner with Amlin in this shared effort to understand such risks.”
Commenting on the three-year programme, Simon Beale, Group Chief Underwriting Officer at Amlin, said: “We believe that the idea of ‘systemic risk of modelling’ resonates with many people in our industry, and like any systemic issue, it is complex and addressing it will require strong collaboration across the industry and academia. Amlin is not just funding the research but also taking an active role, with insurance practitioners testing academic ideas. We hope that funding public research will help bring the best minds together, so that as an industry we find ways to manage and mitigate this risk for the benefit of our clients and stakeholders.”

14 May, 2014

寺澤辰磨「中南米経済の真実」,『証券アナリストジャーナル』52(5),pp.69-72


  • 一方のアルゼンチンは,現在急激な通貨切り下げ圧力を受け経済は停滞しているのに対し,コロンビアの通貨は安定し経済も良好に推移しています。
  • 両国の経済政策の結果を比較するには,まず,第2次世界大戦後の国連ラテンアメリカ経済委員会(ECLAC)が中南米各国へ行った提言から始めるのが適当と考えられます。というのも,両国ともこの提言に基づき同じ政策を採用したからです。
  • (「シンガー=プレビッシュ命題」は,)中南米を典型とする発展途上国の主たる輸出品は農産物や鉱工業原材料等第1時産品であるのに対して,先進国の輸出品は工業製品であることに着目し,経済成長に伴い工業製品の需要は増加するが農産品の需要はそれほど増加しないため,先進国に対する発展途上国の交易条件は構造的悪化をたどるという理論です。
  • この命題に基づいて提言された中南米諸国への戦略が,第1に輸入代替工業化政策であり,第2に地域経済統合による市場拡大という政策でした。
  • このモデルは政府による保護政策によるものですから,次第に生産性の停滞が始まり,国によっては労働政策でポピュリズムを採用したため,ハイパーインフレーションや軍事クーデターが発生しました。
  • アルゼンチンは(…)基本的に労働者に対し甘い政策を維持して,財政規律を破り国の経済力を弱体化する政策を維持します。
  • コロンビアの場合は,アルゼンチンほど工業化が進展しておらず,労働者階級の力が強くなかったこともあって,ポピュリズム政権が誕生しませんでした。
  • 「シンガー=プレビッシュ命題」は,経済学的には正しくない理論であり,中南米諸国は国連による間違った指導の被害者といえます。


13 May, 2014

ABI ノンモデルド・リスクのためのガイド

ABI(Association of British Insurers)がリリースした,“グッドプラクティス”のガイド。数年前はCatモデリングについて(‘Industry Good Practice for Catastrophe Modelling: a guide to managing catastrophe models as part of an Internal Model under Solvency II’)だったけど,今回はCatモデルの範疇にはないリスク,いわゆる「ノン・モデルド・リスク」について。

特段目新しい点はないけれど,この問題に対する今の共通理解が的確にまとめられており,(再)保険者がこの問題を考えるときのよい実践的なガイダンスになるでしょう。

Association of British Insurers "Non-Modelled Risks: A guide to more complete catastrophe risk assessment for (re)insurers"
https://www.abi.org.uk/~/media/Files/Documents/Publications/Public/2014/prudential%20regulation/Nonmodelled%20risks%20a%20guide%20to%20more%20complete%20catastrophe%20risk%20assessment%20for%20reinsurers.ashx
  • 「ノン・モデルド・リスク(Non-modelled risks)」を以下では「NMR」と略す。
  • 2011年のタイ洪水が,ベンダーモデルでは表現されないCatモデルの認識の重要性を浮き彫りに。
  • 日本の地震リスクはモデル化されていたが,2011年3月時点で津波による損害は考慮されていなかった。
  • NMRをここでは,「Catイベントの結果として起こる損保のロスを引き起こす可能性のあるすべてのソースで,会社が現在使用している既存のCatモデルでは明示的に捕捉されていないもの」と定義する。
  • アグリカルチャー,賠償責任,生保は,このドキュメントの対象外。
  • モデルの不確実性(moder uncertainty)も,このドキュメントの対象外。
  • NMRには4つの種類が。(1)地域やペリルがモデルの対象外,(2)地震のあとの津波のような2次のペリル(secondary perils)がモデルの対象外,(3)保険種目がモデルの対象外,(4)保険のカバレッジがモデルの対象外。
  • NMRの担当を会社のどの部門が担うかを決めるにあたり,どのようなスキルセットが必要で,だれがそのスキルを持っているかを見極める必要がある。
  • そのスキルセットには,エクスポージャー管理・ロスモデルの開発・モデル評価・クレームヒストリーの分析,が含まれる。また,現在使用しているCatモデルについて(その限界も含め)精通していることが必須。
  • NMR管理は,4つのステップからなるサイクルで行なう。(1)コンテクストの設定(どのような目的のでNMR管理を行なうか),(2)リスクの特定,(3)リスクの分析,(4)リスクと重要性の評価。
  • すべての過程において,NMRの評価には何が含まれていて何が含まれていないか,どんな不確実性が残っているかを強調することが重要。
  • NMRの特定には,非常に一般的に言えば,3つの方法がある:(1)今のエクスポージャーをベースに,(2)過去ロスをベースに,(3)専門家の判断(expert judgement)
  • 種々の制約がある中で,「重要性」という観点を忘れないこと。
  • ウォーターフォールチャート(滝チャート)で,特定のロスの中に存在する「ノン・モデルド」の要素を可視化する。
  • 「エクスパート・オピニオン」の提供元には,社内の専門家だけでなく,学者,外部のコンサルタント,出版物,セミナーなどがある。
  • エマージングリスク委員会の設置や,ブレインストーミングのような発想法で,シナリオを検討することが,有用なこともある。
  • 会社における通常の業務プロセスは,既知のリスクや既知の欠点に対処するのには優れているが,新しいリスクのソースを積極的に探し当てるという段になると,同じようには機能しないこともある。
  • ヒューリスティックに留意すること。
  • NMRの定量化には,4つの方法がある:(1)専門家のジャッジメント,(2)アクチュアリアル・統計的方法,(3)地理的方法(リスクのマッピング等),(4)Catモデルの調整と開発。