11 October, 2014

中国の保険業界事情と規制(C-ROSS)について

CASから2ヶ月に1冊届けられる『actuarial review』という冊子に,中国の保険業界事情と規制(C-ROSS)について書かれていた論考があった。

著者は,Bo Huang。FCASで,KPMGチャイナのシニア・アクチュアリアル・マネージャー。北京をベースにしており,C-ROSSの Pillar 3 Public Disclosure リサーチプロジェクトのリーダー,CAS C-ROSS Task Forceのメンバーであり,Asia Regional Committeeのメンバーでもある。

Bo Huang, 'From Theory to Action: The China Speed - Are You Ready for the Challenges and Opportunities Brought by C-ROSS?', "actuarial review vol. 41 / No. 5 / September-October 2014"


  • 中国損保業界の2013年のgross written premiumはUSD10.5bn,そのうち75%が自動車保険。
  • 2014年の第1四半期,マーケットは年率17.2%で成長。2008年から2012年までは年率25-30%で成長していた。
  • 2013年末現在,64の損保会社。43はドメスティック,21が外資。
  • トップ3(PICC,Ping An,CPIC)で約65%のシェア。トップ10で85%以上のシェア。外資全体で1.3%。
  • 過去3年の成績は良好だが,減少傾向にはある。クレームコストインフレと規制による料率の据え置き,激しい競争がその理由。
  • 2011年から13年までのコンバインド・レシオは,順に95%,97%,99%。
  • C-ROSS(China Risk Oriented Solvency System)の発展の歩みは,ヨーロッパのソルベンシー2やUSの Solvency Modernization Initiative より早い。その理由として,China Insurance Regulatory Commission(CIRC)による中国の中央集権的規制システムが挙げられる。そこでは,「フロントエンド(プライシング,販売,製品,投資)を緩め,バックエンド(ソルベンシー,ガバナンス)を強化する」規制が目指されている。
  • 最近の見方は,C-ROSSは2016年1月1日よりも前に発効されるであろうとのこと。
  • CIRCは2013年5月にC-ROSSの全体構想を公式に発表。そこでは,国際的な共通事項である「3ピラー」が踏襲されているほか,エマージング・マーケットに特徴的な要素(高成長,リスク管理の不足,限られた数理分析のキャパシティと経験,限定的なディスクロージャーなど)も反映されている。
  • 2014年4月,CIRCは最初の Consultation Paper(CP)を発表。このドラフト段階のルールでは,定量的資本要件(ピラー1)と定性的リスク管理要件(ピラー2)を含んでいる,損保会社向け。パブリックディスクロージャー要件(ピラー3)はこの段階では含まれていないが,2014年遅くの生保会社向けドラフトとともに発表されるとみられる。
  • CIRCはCPに対するフィードバックとすべての損保会社に対して定量的影響度調査(Quantitative Impact Study, QIS)を求めたが,期間は1週間もなかったことは言及に値する。
  • C-ROSSが他のソルベンシー規制と一線を画するような要素が,CPに散見される。
    • ピラー1では標準フォーミュラが用いられ,内部モデルの使用は認められない。リスクの相関については,相関マトリックスが用いられる。
    • 逆累進リスクファクター(保険料や準備金が増えるほどマージナルなリスクチャージが減少する)が保険リスク引受最低資本の計算に導入されることで,より多くの自動車保険を引き受けている大規模の保険会社が得をする。
    • オフショアの最保険会社に対して高いカウンターパーティーデフォルトリスクが適用される。これにより,中国国内の最保険会社,あるいは中国国内に支店を構える最保険会社への出再が推進される。
    • 国内なるいは国際的にシステム上重要な保険会社に対する資本チャージが適用される。
    • ピラー2のリスク管理フレームワーク,Solvency Aligned Risk Management Requirements and Assessment(SARMRA)は,非常に膨大でかつ徹底的。保険会社のERMの質が直接的に最低資本要件に影響したり,独立の第三機関によるERM評価が毎年必要であったり。
  • CIRCは最近QISの結果(速報)のサマリーを発表した。多くの会社で,利用可能資本(分子)と最低資本(分母)が現行規制に比べ増加した。利用可能資本の増加は,主に保険料準備金とGAAP準備金のコンバージェンスによるもの。最低資本の増加には多々の理由がある。
  • 保険会社からのフィードバックとして,
    • ほぼすべての大規模保険会社で最低資本が減少する一方,小規模保険会社のソルベンシーポジションは悪化する(いくつかのケースでは著しく悪化する)
    • ピラー2の要件が厳しすぎる
    • オフショアの最保険会社に対する信用リスクのチャージが高すぎる
  • このフィードバックに基づき,CIRCはいくつか内容を修正した上で再度QISを行なう模様

(補足)
このリンク先にも,C-ROSSについて簡潔にまとめている資料があった。